1963年11月22日、初の日米衛星中継でいきなり飛び込んできたのがケネディ大統領暗殺のニュースだった。
悲劇から葬儀までの4日間、大統領夫人ジャッキーこと、ジャクリーンの言動に迫る。
監督はチリ人のパブロ・ラライン。
ジャッキーと言えば、華麗なファーストレディをイメージするが、実は夫を引き立てる陰のプロデューサーでもあった。
この暗殺を題材にした映画やドラマが多々ある中で、夫人に焦点を当てたのは極めて珍しい。
副大統領の大統領就任宣言と司法解剖の立ち合い、転居の準備……。
悲嘆にくれる間もなく、ジャッキーは職務に翻弄される。
見方を変えれば、特別な存在から市井の人に戻るプロセスともいえる。
夫の伝説を忘れないでほしい。
その思いから、34歳の彼女が荘厳な国葬を取り仕切る。
そこが映画の見せ場。
司法長官の義弟ロバート(ピーター・サースガード)の忠言を受けながらも、決して信念を曲げない。
気品と知性があふれ、常に毅然とした態度で臨むも、時折、弱さを垣間見せる。
人生の激変期にあって、引き際の美学を求める姿が何ともいじらしい。
そんな主人公の人間的な面をナタリー・ポートマンが堂々たる演技で見せ切った。
近づき難い人物なのに、妙に親近感を抱かせる。
彼女の代表作になるだろう。
ケネディが在任中、「キャメロット」と呼ばれたホワイトハウスでの華やいだ日々と沈痛な空気が漂う現在とを対比。
そこに当時の記録映像を随所に挿入し、臨場感を高めていた。
後日、雑誌記者の取材を受けるジャッキーの回想形式で物語が展開する。
衣装や内装など細部にこだわった映像は全く飽きさせない。
ただ、生前の夫ケネディとの絡みが少なかったのが残念。
使命感を伴った内助の功。
心理面を重視した1人劇としても観させる。
1時間39分
★★★★(見逃せない)
☆31日から大阪ステーションシティシネマほかで公開
(日本経済新聞夕刊に2017年3月24日に掲載。許可のない転載は禁じます)