武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

時空を超えた奇跡の絆~アメリカ映画『ワンダーストラック』

投稿日:

時の隔たりを超えて結びつく2つのドラマ。

よくある設定だが、本作は絶妙な語り口でぐいぐい引きずり込んでいく。

児童文学を思わせる世界観にも心がくすぐられた。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

1977年、まだ見ぬ父親に会いたくてミネソタの田舎町からニューヨークへ向かった少年ベン(オークス・フェグリー)。

その50年前、憧れの映画女優リリアン(ジュリアン・ムーア)に接見するためニュージャージーから同じ大都会を目指した少女ローズ(ミリセント・シモンズ)。

ベンは母親を交通事故で亡くし、計り知れない喪失感を抱いている。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

豪邸で暮らすローズは父親とそりが合わず、孤独な日々を送っている。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

共に自分の居場所がない……。

さらに少年は落雷で耳が聞こえなくなり、少女は生まれながらの聴覚障害者。

相似点を持つ2人がニューヨークの自然史博物館を舞台に奇抜な物語を紡ぎ出す。

時代性を顕著にするため、片やカラー、片やモノクロで交互に描かれる。

ローズの話は無声映画を観ているようだ。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

2つの物語がシンクロしていくところが非常にスリリングで、かつ心地よい。

トッド・ヘインズ監督の演出は巧妙に計算し尽くされている。

古今東西の珍妙な展示品を集めた「驚異の部屋」へと2人を誘うプロセスが特に秀逸だった。

ベンが父親探しの手がかりとした書店の店主、彼をエスコ―トする闊達な少年、ローズの思慮深い実兄。

そしてジュリアン・ムーアが二役で扮した映画女優と心優しい老女。

脇の布陣が手堅い。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

デビッド・ボウイの名曲『スペース・オデュセイ』も実に効果的に使われていた。

ローズに扮した子役シモンズは実際に耳が不自由だ。

緊張感を伴う不安な少女の心象を観る者に体感してもらおうと起用した。

その狙いが見事に的中。

Ⓒ2017 AMAZON CONTENT SREVICES LLC

子供が旅を通して成長する冒険譚。

ラストの清々しさに胸が熱くなった。

1時間57分

★★★★(見逃せない)

☆シネリーブル梅田ほかで公開中

(日本経済新聞夕刊に2018年4月6日に掲載。許可のない転載は禁じます)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

パワーアップした第2弾『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』

パワーアップした第2弾『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』

イギリス・ロンドンで半年間、英語留学してきた教え子の倉田君(関大JP5期生)が昨夜、お土産のスコッチ・ウイスキー(シングル・モルトのBladnoch)を提げて、会いに来てくれました。 内定していた金融 …

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

ジャジャジャーン、今年の映画ベストテンの発表です~(^_-)-☆

2018年 映画ベストテン 【日本映画】 1 『孤狼の血』監督:白石和彌 役所広司、松坂桃李、真木よう子 2 『日日是好日』監督:大森立嗣 樹木希林、黒木華、多部未華子 3 『ごっこ』監督:熊澤尚人  …

破滅へとひた走る~『紙の月』

破滅へとひた走る~『紙の月』

テレビドラマで話題になった『紙の月』。   映画版は、独特な味付けが施されていますよ。   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆                    …

「映画の日」にちなんで……。

「映画の日」にちなんで……。

今日から師走。   12月1日は「映画の日」です。   それにちなんだ1日となりました。   本日、届いたウイスキー専門雑誌『Whisky World』の12月号。   …

小栗康平監督はお元気でした~!!

小栗康平監督はお元気でした~!!

『泥の河』(1981年)、『伽耶子のために』(84年)、『死の棘』(90年)、『眠る男』(96年)、『埋もれ木』(2005年)。   33年間に手がけた映画がわずか5本。   小栗康平監督は実に寡作な …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。