ホームドラマを深化させてきた是枝裕和監督が一転、社会派の裁判ドラマに挑んだ。
法廷での真実とは何なのか。
心理サスペンスの形態を取りながら、その重い命題にメスを入れた。
『そして父になる』(2013年)に次いで福山雅治をエリート弁護士の重盛役に起用。
強盗殺人犯の三隅に役所広司を充て、両者ががっぷり四つに組んだ。
三隅は解雇された食品加工工場の社長の殺害をあっさりと認める。
それが真実なら、30年前に強盗殺人の前科があるため、死刑判決は間違いない。
重盛は無期懲役に減刑させるべく作戦を練る。
ところが三隅の供述が二転三転し、何と被害者の妻(斉藤由貴)から保険金殺人を依頼されていたと言う始末。
弁護すべき被告人に弁護側が翻弄される歪な展開が実にスリリングだ。
そのうち被害者の娘、咲江(広瀬すず)の存在がにわかに浮上してくる。
勝つためには真実は二の次。
そんな信条を貫いてきた重盛が態度を変え、真実究明に向けて本腰を入れる姿が本作の核となる。
見せ場は拘置所内の面会室での三隅と重盛の接見。
計7回ある。
ガラス越しに対峙する2人。
クローズアップを多用した緊迫感あふれる映像に圧倒される。
一般に裁判映画の主舞台は法廷だが、ここでは面会室。
静止した場面なのに、躍動的に感じられるのは演出力の為せる業なのだろう。
接見の度に表情を変える三隅が何とも不気味。
つかみどころのない鵺のように思える。
役所の円熟味ある演技に福山が果敢に応戦する、そんなふうに見えた。
少し違和感を抱いたのが三隅の1度目の殺人事件の担当判事が重盛の父親という点。
話が出来過ぎているような気がしたのだが……。
題名の3度目の殺人とは何なのか。
日ごろあまり意識していない刑事裁判のあり方を考えさせられた。
1時間43分
★★★★(見逃せない)
☆TOHOシネマズ梅田他全国ロードショー
☆配給:東宝 ギャガ
(日本経済新聞夕刊に2017年9月8日に掲載。許可のない転載は禁じます)