武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

伝説的な白人と黒人の芸能コンビの生きざま~フランス映画『ショコラ~君がいて、僕がいる~』

投稿日:

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

今月15日、日本での映画興行120年目を迎える。

フランスのリュミエール兄弟が発明したシネマトグラフが大阪で一般公開されたのだ。

その「動く写真」に世界で初めて登場した芸人が本作の2人組である。

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

フティット&ショコラ。

19世紀末から20世紀初頭のベル・エポック期にパリで人気を博した白人と黒人の伝説的なコンビ。

自国でも忘れさられた2人の生きざまが切々と綴られる。

出会いはサーカス。

怖い有色人種を演じていた黒人青年にピエロのフティットが才能を見出し、声がけする。

非人道的な見世物が横行する中、「黒人ではない。道化師を探している」という彼の言葉が胸に響く。

肌の色から、その青年はショコラ(チョコレート)と名づけられ、ドタバタ喜劇で観客を笑わせた。

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

それはしかし、フティットに尻を蹴られる内容で、人種差別に根づくものだった。

奴隷の子で、不法移民のショコラを相方がプロ芸人として接し、嫉妬心を交えながらも支え続ける。

サブ2s

そのコンビ愛と友情が映画のテーマになっていた。

互いに対等な立場、自分は芸術家…………。

2人がパリの名門喜劇劇場の専属になってから、ショコラは自意識に目覚めるも、世間はそれを許さない。

社会の立ち位置の相違から生じる苦悶が見どころの1つ。

モロッコ系のロシュディ・ゼム監督はショコラの心情を巧みにくみ取り、2人の価値観のぶつかり合いを通じて、この男の解放の物語に仕上げた。

時代考証が完璧で、演出も手堅い。

舞台以外では孤独で、神経質なフティットを喜劇王チャップリンの孫ジェームス・ティエレが好演。

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

©2016 Gaumont / Mandarin Cinéma / Korokoro / M6 Films

ショコラ役のオマール・シーも快楽主義者の裏に潜む複雑な内面を見事に表現した。

ラストに流れるシネマトグラフの映像。

必死に芸を演じる2人からたまらなく哀愁が感じられた。

1時間59分

★★★★(見逃せない)

☆4日からテアトル梅田、なんばパークスシネマで、25日からシネリーブル神戸、以降、京都シネマにて全国順次公開

(日本経済新聞夕刊に2017年2月3日に掲載。許可のない転載は禁じます)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

やっかいなおっさんが甦った!~ドイツ映画『帰ってきたヒトラー』

やっかいなおっさんが甦った!~ドイツ映画『帰ってきたヒトラー』

ドイツという国はつくづく大人だと思う。 あの独裁者アドルフ・ヒトラーを現在に甦らせ、ブラックコメディーに仕上げているのだから。 17日から公開の『帰ってきたヒトラー』。 映画ファンのための感動サイト、 …

「原爆の日」……、映画『さくら隊散る』

「原爆の日」……、映画『さくら隊散る』

きょうは67年目の「原爆の日」。   ヒロシマ・ナガサキの悲劇を描いた映画は多々ありますが、この作品も忘れがたいです。   以前、新聞『うずみ火』で掲載された拙稿をどうぞ。 &nb …

西川美和監督の新作~『永い言い訳』(公開中)

西川美和監督の新作~『永い言い訳』(公開中)

『蛇イチゴ』、『ゆれる』、『ディア・ドクター』など意外性のある作品を手がける西川美和監督の新作。   他人同士の不思議な絆が芽生える様子を、移ろう人の気持ちとシンクロさせ、バランスよく紡ぎ出 …

メディアの陰の部分に迫る社会派映画~『ニュースの真相』

メディアの陰の部分に迫る社会派映画~『ニュースの真相』

4月に公開された米映画「スポットライト 世紀のスクープ」と同様、ジャーナリストの素顔に迫った実話の映画化。 本作も調査報道を題材にしているが、特ダネをモノにした成功譚ではなく、それが誤報といわれた顛末 …

再度の告知、3月6日(土)、奈良の今井町でトークショー『映画に見るカフェ~ティー&コーヒーは名脇役』

再度の告知、3月6日(土)、奈良の今井町でトークショー『映画に見るカフェ~ティー&コーヒーは名脇役』

以前、告知しましたが……。 今日から約1ヶ月間、江戸時代の風情を宿す奈良県橿原市今井町で、連続イベント『おいしい映画散歩』が始まります。 今井町見晴らし茶屋「ももや」さんで、3月6日(土)10:30〜 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。