「007」のブランド力は強烈だ。
53年間も続いてきたシリーズなのに、24作目の本作が封切られるや、気分が高揚する。
6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグも4度目とあって、板についてきた。
ドクロの仮装をした人たちで賑わう「死者の日」のメキシコシティー。
その雑踏から現れたボンドがターゲットの人物にライフルを構えるまでノーカットで見せ切る。
その後は一転、乱舞するヘリコプターをカットの連続で映し出す。
メリハリの効いたオープニングシーンの後、ボンドを標的にした銃口のイメージ画像が現れ、そこにテーマ曲がかぶさる。
クレイグ主演では初めて。
原点回帰したことが強調される。
物語が進むにつれ、題名の犯罪組織スペクターの存在が浮上。
過去3作の登場人物が絡み、やや複雑な様相だが、この映画だけを観ても十分、わかる。
ボンドの少年期が重要なカギを握る。
内省的な場面がいくつもあり、暗鬱なムードも醸し出される。
前作『スカイフォール『』(2012年)に続きメガホンを取ったサム・メンデス監督はそこにこだわっていたように思えた。
脇筋にボンドが所属する英国政府のMI6(秘密情報部)が別組織に統合される顛末が描かれる。
上司M(レイフ・ファインズ)や兵器開発担当のQ(ベン・ウィンショー)、同僚マネーペニー(ナオミ・ハリス)が一致団結する様が面白い。
宿敵の男に扮するのが実力派俳優クリストフ・ヴァルツ。
毒々しい嫌な男を演じさせれば、この人の右に出る者はいない。
ボンドが女医(レア・セドゥ)を伴い、この人物と対峙する場面は心をくすぐられる。
愛車アストン・マーティン(最新型)、秘密兵器、ウォッカ・マティーニ……。
お決まりのモノが銀幕で確認でき、思わずしたり顔に。
007映画よ永遠なれ。
2時間28分
★★★★(見逃せない)
☆TOHOシネマズ梅田ほかで公開中
(日本経済新聞夕刊に2015年12月11日に掲載。許可のない転載は禁じます)