武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『告白』~完成度の高い映画です~

投稿日:2010年6月6日 更新日:

きのう高校(大阪府立清水谷高等学校)の同窓会がありました。
有志会という形だったのですが、50人近く集まり、懐かしい面々と楽しいひと時を過ごすことができました。
高校を卒業して、はや37年……。
アホなことばかりしていたあの青春時代が遠い昔のことになってしまいました。
喋ってばかりしていて、写真を撮るのをすっかり忘れた~!!
近々、写真が届くと思いますので、そのときにでもブログに載せます。
話がコロッと変わりますが、きのうから全国東宝系で封切られた日本映画『告白』はなかなか見応えがありますよ。
その映画評をどうぞ~♪♪
   *      *      *      *      *     *
告白のメイン
(c)2010 「告白」製作委員会
ある中学の教室。
授業中なのに生徒の大半が雑談している。
ボールを投げ合っている者も。
そんな雑然とした雰囲気の中、担任教諭の森口悠子(松たか子)が感情を押し殺して淡々と告白する。
不協和音が漂うこの異様な冒頭シーンからぼくの目を釘付けにした。
つぶやきにも似たその告白とは--。
学校のプールで水死した3歳の娘は事故死ではなく、2人の教え子に殺されたという衝撃的な内容。
それも犯人を特定している。
瞬時にざわめきが止み、37人の生徒が凍りついた。
何という展開だ。
犯人探しではなく、題名通り、登場人物の告白によって殺人の動機や家庭環境などを浮き彫りにしていく。
湊かなえの原作では、独白の食い違いや虚実が独特な面白さを生んだが、映画では復讐を前面に押し出している。
証言に絶対的な信憑性がないのを心すべし。
『嫌われ松子の一生』(2006年)や『パコと魔法の絵本』(08年)などで原色を多用し、きらびやかな空間を構築した中島哲也監督だが、ここでは一転、薄ら寒い蒼白い映像で統一した。
それが翳りを帯びた内面の世界と符合し、不気味な静謐さを伴ってドラマを深みへと落とし込む。
告白のサブ
(c)2010 「告白」製作委員会
不登校になった犯人の生徒宅へ新任の熱血教師、寺田(岡田将生)が頻繁に訪問する件がサブプロット(脇筋)として光っていた。
過保護な母親(木村佳乃)が追い詰められ、とんでもない事態に発展する。
熱意の空回り。
やるせなさの裏に森口の怨念を絡ませる。
中学生の犯罪、しかも教師がリベンジする物語とあって、正直、抵抗感を抱いた。
しかし家族愛を描いた作品だと思えば、納得できる。
テロや無差別殺人の恐怖に怯える現代。
愛する者を殺された遺族の心情を濃厚にあぶり出していたから。
完成度の高い映画だった。
1時間46分。★★★★(見逃せない)
(日本経済新聞2010年6月4日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。