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【PG-12】指定作品
現在、公開中の映画『愛を読む人』の映画エッセーです。
誰にでも人には言えない秘密が1つや2つはあると思います。それが自分の尊厳やプライドに関わるものであるなら、絶対に明かしはしないでしょう。しかしそれで一生が台無しになるとわかったら、はてどうする?
この映画のヒロインが取った行動をどう受け止めればいいのでしょうか――。
1958年、西ドイツのとある町で、高校生のマイケル(デヴィッド・クロス)と市電の車掌をしている21歳年上の独身女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)が恋に落ちます。
まさか、まさか。こんなことってあり得るのでしょうかね。衝撃的な展開に引いてしまいそうになりましたが、2人の愛はどこまでも純粋。恋愛には年の差なんて関係ないことを納得させられます。
ハンナはマイケルに、いつも本を読んでほしいとねだるんです。『オデッセイア』とか『チャタレイ夫人の恋人』とか、古今の名作を青年は嬉々として朗読し、そのひと言ひと言をハンナは真剣に受け止めます。このシークエンスが物語の伏線になっています。
やがて別れの時が……。彼女が突然、失跡したのです。理由はわかりません。倫理的に良からぬことだと自分を責めていたのか、あるいはマイケルの強烈な愛情に疲れたのか。
そして8年後(66年)、大学で法学を専攻しているマイケルが、ナチスによる戦争犯罪の裁判を傍聴したとき、あろうことか被告席にハンナの姿を目にしたのです。吃驚するマイケル。一体、彼女は何者だったのか……。
この裁判のシーンで、ハンナの素性が明らかになってきます。ここでは戦時中、彼女がどんなことをしていたのかについては触れません。ただ、戦争犯罪者として罪を問われていることがハンナ自身、どうにも理解できないようでした。国民として国家のために忠実に尽くしただけなのにという思いが伝わってきます。
彼女にはさらに秘密がありました。それを法廷で告白するのを頑なに拒み、自分1人だけ罪を背負って無期懲役の刑に服するんです。
えーっ! そこまでして隠さねばならない秘密なのか、ぼくには理解に苦しみます。人生の重みを考えると、彼女の選択が正しかったのかどうか疑問に思えて仕方がありません。
服役中のハンナに対し、弁護士になったマイケル(レイフ・ファインズ)は新たな形で愛を注ぎ続けます。彼は本気で彼女を愛していたのです。その行為が後半を盛り上げていきます。
ドイツの作家ベルンハルト・シュリンクが1995年に発表した小説『朗読者』が原作。それをイギリス人のスティーヴン・ダルトリー監督が映画化しました。36歳から70代までのハンナを演じたウィンスレットは今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞。確かにきめ細かい演技を披露してくれました。
しかしドイツの物語なのだから、英語ではなく、きちんとドイツ語で通してほしかった。それが非常に残念でした。
(「うずみ火」2009年6月号)
絶対に明かせない秘密……『愛を読む人』~
投稿日:2009年6月26日 更新日:
執筆者:admin