武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『ウルフマン』、伝説の怪奇映画をリメーク~

投稿日:2010年5月4日 更新日:

好天に恵まれたゴールデンウィークですね。
夏日とあって、野外で開放感に浸っている人が多いのではないでしょうか。
こんなときこそ、暗い映画館でホラー映画はいかがですか。
アメリカ映画『ウルフマン』の映画エッセーをどうぞ。
   *     *     *     *     *     *
ウルフマン(1)
    © 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. R15+
満月の夜、獰猛な狼に男が変身――。
ドラキュラ、フランケンシュタインと並び称される“怪人御三家”のひとり狼男の物語。
ホラー映画の名作といわれる「狼男」(1941年)のリメークだ。
大英帝国華やかなりしころの19世紀末、失踪した兄を捜すため、25年ぶりに故郷の村に戻った舞台俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)が野獣に襲われ、瀕死の重傷を負う。
そのうち彼の体に異変が……。
狼の凶暴性が猛烈なスピード感と相まって増幅され、圧倒的な強さをみせる。
異様に大きく、狼人間というより、完全にモンスターだ。
21世紀の視点で創造された狼男と納得すればいいのだろうが、どこかコミカルに見えて仕方がなかった。
冷気を帯びた独特な陰鬱さを前面に押し出し、全体のトーンは非常にオーソドックスで、古典的怪奇映画の雰囲気すら感じさせる。
それだけに狼の風体にひと工夫ほしかった。
日ごろは物静かな紳士が、おぞましい蛮行を重ねる獣人に様変わり。
自分の意思で阻止できない“二重人格性” が要となる。
呪われた宿命に苦悶するローレンスをデル・トロが悲痛に演じる。
そんな彼を兄の婚約者グエン(エミリー・ブラント)が理解し、2人が惹かれ合う件は、もう少しさらりと描いてほしかった。
ウルフマン(2)
    © 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. R15+
物語に厚みを与えたのが、主人公と父親タルボット卿(アンソニー・ホプキンス)との確執。
この父子関係を強調したことで、ストーリーがグンと明快になった。
「羊たちの沈黙」(91年)の殺人鬼レクター博士の役で強烈な印象を与えたホプキンスが、演技に悲観主義的な翳りを投影させる。
スリル、サスペンス、残虐性。これら3点がホラー映画の基本要素だと改めて実感させられた。
監督はジョー・ジョンストン。
1時間42分。★★★
☆TOHOシネマズなどで公開中
(日本経済新聞2010年4月23日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。