武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

バルト3国レポート(8)~

投稿日:2009年10月19日 更新日:

坂の
この秋から放映されるNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の原作を、先日、読破しました。司馬遼太郎さんの代表作ですね。文庫本で全8巻~! 学生時代から5度目のチャレンジでようやく読み切ることができた~。
(こんなことを言うと怒られそうですが)小説としては破綻しており、日清・日露戦争を克明に“記録”した歴史読本。そう思いました。小説を読むつもりでページを繰っていたので、だからこれまで断念していたわけです。
歴史書と割り切って読めば、OK。司馬さんの作品はおおむねそうですが~。
それにしてもすごい情報量ですね、この本は。司馬さんは元新聞記者、そう思わしめる内容でした。
大学生のころ、ロシアのバルチック艦隊が日本に向かうところで読むのをギブアップしましたが、50隻もの大艦隊が繰り出した港がその後、ずっと気になっていました。それが今回の旅で訪れることができました~!
ラトヴィアの西海岸にあるリエパーヤです。帝政ロシア時代はリバウと呼ばれていました。
ぼくが琥珀のペンダントを壊したリトアニアのクライペダから、バルト海沿いにバスを乗り継ぎ、国境を越えてこの町にやって来ました。
国境といっても、5年前、バルト3国がそろってEUに加盟してから検問はなくなり、知らぬ間にラトヴィアへ入国したといった感じ。
リトアニアの保養地パランガから乗ったバスはリエパーヤ行きでした。ラトヴィアの民間会社のバス。終点で降りようとしたら、ラトヴィアのお金(ラッツ)がない~! 事前に両替せずに乗ってしまったんです。バルト3国はまだユーロを使っていません。
ユーロとリトアニアのお金(リタス)を若い運転手に見せると、「使えません」とわかりやすい英語で答えてくれました。
どうしよう??!! あわてふためくぼくに、運転手君は「両替できますよ」。怒っている素振りはない。いや、笑みを浮かべていた。見るからに人の良さそうな青年でした。
助かった! 両替して運賃を支払い、下車すると、そこは駅前のバスターミナルではなかった。市街地のどこか……。どうやらかなり南のほうみたい。
大阪で言えば、東住吉区のようなところかな。周りはふつうの民家が立ち並んでいるだけで、ホテルらしき建物が見当たりません。
もう午後7時をまわっている。白夜なので、昼のように明るいけれど、こんな所に放り出されたら、たまったものではない。タクシーも通っていないし……。
またまたあわてふためくぼくに、運転手君は「街中のホテルまで送ってあげますよ」。
え~っ!! まさに神の声のように思えました。ぼくと嫁さんは貸切状態でバスに揺られ、中心部へ。ほんとうに助かった。この一件で、ラトヴィアに対する印象がグーンと高まりました。
リエパーヤ(1)
街中には市電(トラム)が走っていました。ひと昔前の古びた車両。なんとなく郷愁を覚えます。
北側の駅のほうへと散策すると、旧市街。時間が止まっているというか、静止画のごとき世界……。古色蒼然とした街並みは、帝政ロシア時代にタイムスリップしたような印象を与えました。
リエパーヤ(2)
あとで訊くと、リエパーヤはロシア系住人が圧倒的に多いそうです。とくにこの旧市街はそうらしい。たしかに住民の顔立ちは、あの温和なラトヴィア人の運転手君とはちがっていました。
リエパーヤ(3)
翌朝、バルチック艦隊が出航した旧軍港(カロスタ地区)へ足を伸ばしました。そのレポートはまた近々、報告します。

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。