(c)2012 Studio Hamburg FilmProduktion GmbH / C-Films AG / C-Films Deutschland GmbH / Cinemate SA. All Rights Reserved.
『リスボンに誘われて』
この邦題に惹かれました。
内容も想定外に良く、今のところ今年観た外国映画のベストワンです。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「人生を十分に生きた時、私たちは自分自身へ旅する。たとえ人生がどんなに短くても……」
「死への恐怖とは自分がなろうとした人間になれないことへの恐怖だ」
心に突き刺さるアフォリズム(金言、格言)を散りばめた、この世に100冊しかない本。
ポルトガル人男性が書き記した『言葉の金細工師』。
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その書物と出会った初老の男がリスボン行きの夜行列車に飛び乗った。
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何かに取り憑かれたかのような衝動。
突発的な出来事といい、この導入部に引き込まれる。
内向的で、退屈な独居生活を送るスイスの高校教師ライムントが自分を見つめる旅に出た瞬間を見事に捉えていた。
適役としか言いようのない主演のジェレミー・アイアンズ。
にじみ出る知性に倦怠感と諦観が重なり、独特な魅力をかもし出す。
著者アマデウは若かりしころに他界していた。
ここから映画はサラザール独裁政権下の1970年代を甦らせる。
恐怖に支配された暗黒の時代だった。
この男に何があったのか。
人嫌いなライムントが次々と関係者に当たり、事実を暴いていく。
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サウダーデ(郷愁)が漂う黄昏のリスボンを舞台にした極上の謎解き。
あゝ、胸が高まる。
それ以上に医師のアマデウ(ジャック・ヒューストン)が反体制活動家として生きた世界に瞠目した。
同志との確執、秘密警察の人権抑圧、特殊な能力を持つ女性活動家エステファニア(メラニー・ロラン)との激しい恋……。
非常に濃厚なドラマが渦巻く。
現代と40年前。
2つの物語を交錯させ、主人公に生きる意味を示唆する。
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それを完璧に映像化したデンマーク人の名匠ビレ・アウグスト監督の円熟味ある演出に酔わされた。
人との邂逅が人生に計り知れない光輝を与える。
アマデウが意味あり気な本を書いた理由が深い余韻としていつまでも胸に残った。
1時間51分
★★★★★(今年有数の傑作)
☆9/13(土)より、シネ・リーブル梅田/シネ・リーブル神戸にてロードショー!
9/20(土)より、京都シネマにて
(日本経済新聞2014年9月12日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)