武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画 未分類

鮮烈な愛、実は純な愛……、日本映画『そこのみにて光輝く』

投稿日:2014年4月18日 更新日:

                      (C)2014/佐藤泰志/「そこのみにて光輝く」製作委員会

この映画は、おそらく一生、心に刻まれると思います。

 

実際に観て、「感じて」ほしいです。

 

☆     ☆     ☆     ☆    ☆     ☆

惹かれ合う男女の熱い吐息に心ががんじがらめになりそうだった。

 

凄まじい、かつ新鮮な恋愛映画。

 

スタッフ、キャストの製作にかける魂がビンビン伝わり、冒頭から一気に観させた。

 

原作は41歳で早逝した注目の作家、佐藤泰志の唯一の長編小説。

 

高評価を得た「海炭市叙景」(2010年)と同じ函館が舞台だが、本作は寒々しい夏の物語である。

 

山の採石場で働く達夫(綾野剛)は事故で同僚を亡くし、腑抜け状態になっている。

 

一方、海辺のバラックで暮らす千夏(池脇千鶴)は1人で家族を支えており、その呪縛から逃れられず、人生を諦観している。

 

そんな2人が運命的な邂逅を果たす。

 

パチンコ店で達夫が彼女の弟、拓児(菅田将暉)と知り合ったのがきっかけ。

 

ヘビースモーカーで、ひたすら喋りまくるこの男の無邪気さが際立つ。

 

生きる素地が似ているのか、互いにひと目惚れ。

 

そして千夏の素顔を達夫が知るや、愛が濃縮していく。

 

それも悲痛な叫び声を伴って。

 

不倫を清算できない彼女が哀しくてやるせないけれど、それも納得できる。

 

極めて過酷な状況下、達夫と拓児が共に純粋で不器用な人間ゆえ、千夏のために青臭い行動に打って出る。

 

それがハードボイルド風で妙にメリハリがあった。

 

池脇は『ジョゼと虎と魚たち』(03年)で演じた障害者の役どころ以上に体当たりで臨んだ。

 

綾野も目を充血させ、切羽詰まった感情を表現した。

 

圧巻の一言。

 

本気さが伝わってくる迫真の演技を引き出した呉美保監督は容赦なく人間の本性を銀幕にぶつけた。

 

これが監督3作目。

 

前作『オカンの嫁入り』(10年)からは考えられないほどドラスティックな演出を貫いた。

 

愛することは生きること。

 

その当たり前のことを真正面から見据えた映画だった。

 

2時間。

 

★★★★(見逃せない)

 

☆19日からなんばパークスシネマほかで公開

 

(日本経済新聞2014年4月18日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画, 未分類

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

24日(金)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ』に出演します

24日(金)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ』に出演します

WBC、侍ジャパン、アメリカに勝ち、優勝🏆️!! 最後は大谷が強打者トラウトを三振で仕留め、最高の形で勝利を味わえました。 3対2。 ホンマにええ試合でした~&#x270 …

読売と日経の夕刊に映画原稿が載りました~(#^^#)

読売と日経の夕刊に映画原稿が載りました~(#^^#)

読売新聞には、5月3日から公開されるヒュー・ジャックマン主演のミステリー&サスペンス『プリズナーズ』。   顔写真付きです~(#^^#) この映画はほんまに観させますよ。   日経 …

吹けば飛ぶような将棋の駒……ではない! 日本映画『3月のライオン』

吹けば飛ぶような将棋の駒……ではない! 日本映画『3月のライオン』

  将棋の映画『3月のライオン』の前篇が18日、後編が4月22日から公開されます。 映画ファンのための感動サイト「シネルフレ(Cinereflet)」の『武部好伸のシネマエッセイ』でこってり …

西川美和監督の新作~『永い言い訳』(公開中)

西川美和監督の新作~『永い言い訳』(公開中)

『蛇イチゴ』、『ゆれる』、『ディア・ドクター』など意外性のある作品を手がける西川美和監督の新作。   他人同士の不思議な絆が芽生える様子を、移ろう人の気持ちとシンクロさせ、バランスよく紡ぎ出 …

『ミナミまち物語 シネマ・ヒストリー』が完成~!!

『ミナミまち物語 シネマ・ヒストリー』が完成~!!

大阪・ミナミの活性化を目指し、地元企業が中心になって組織された「ミナミまち育てネットワーク」。 そのホームページに、ぼくが執筆した『ミナミまち物語 シネマ・ヒストリー』が新設されました。 〈日本映画の …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。