この映画、観させますよ。
迫力ある映像に圧倒されました!
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F1史上、語り草になっている2人の天才レーサーの物語。
ライバル心を燃え盛らせながら、互いに相手をリスペクトする姿に胸が打たれる。
臨場感満点の映像が1970年代の息吹を鮮やかに浮き立たせた。
ロン・ハワード監督の渾身の一作だ。
自由奔放で享楽的な生き方を貫く英国人のジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)。
片や禁欲的で綿密なレース展開を信条とするオーストリア人のニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)。
全く対照的なキャラクターだけにドラマを作りやすい。
70年のF3サーキットで2人が出会った瞬間から対立の構図が芽生え、あとは次第にエスカレート。
私生活を絡ませ、76年に繰り広げられたグランプリを軸に熾烈な闘いを活写する。
それぞれに「運命の人」と位置づけ、彼らだけを見据える。
他のレーサーの存在は皆無。
両者の違いをことさら強調するも、その中で実は共通点がいくつもあることを匂わせる。
思ったことをズバズバ言いのける自己主張型の人間。勝つことに対する異常なほどの執念。
そして極限への飽くなきチャレンジ精神……。
敵愾心が高揚するにつれ、心理的な距離感が狭まってくる。
ラウダのマシン(車)がクラッシュし、瀕死の重傷を負ってからが顕著になる。
その事故に至る伏線が後半に濃縮されるところが本作の妙。
レースの場面が圧巻だ。時速300㌔を超えるスピード感をヘルメットに装着した小型カメラで容赦なくぶつけてくる。
さらに30台以上のカメラで撮り続けたというから、リアル感が半端ではない。
地響きと爆音が脳髄を心地よく刺激する。
彼らの接点はレース上だけ。
命を張った男のロマン。
時代を駆け抜けた勇姿に理屈抜きに惹かれた。
2時間3分
★★★★(見逃せない)
☆大阪ステーションホテルほかで上映中
(日本経済新聞2014年2月7日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)