武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

加賀の郷土料理を介して夫婦の絆を~『武士の献立』

投稿日:2013年12月17日 更新日:

(c)2013「武士の献立」製作委員会

こういう映画、すごく好きです。

よく出来た時代劇だと思います。

     ☆      ☆      ☆     ☆

別にグルメでなくても、料理を描いた映画は何となく気になる。

銀幕の中でどう使われ、いかに映えるか。

それを観るだけでも実に楽しい。

そこに滋味深い家族ドラマや時代背景が絡めば、申し分ない。

本作はまさにそういう作品だった。

江戸時代中期(18世紀)、加賀藩の物語。料理人として主君に仕える武士、彼らは「包丁侍」と呼ばれていた。

その知られざる世界を舞台にしたことで、俄然、興味を引きつけられた。

同藩の由緒ある料理方、舟木家の跡取り、安信(高良健吾)は剣術好きで、料理が大の苦手。

そこに出戻りの娘、春(上戸彩)が嫁いだ。

料理上手な彼女の腕を、有能な父親(西田敏行)に見込まれたからである。

気が強く、姉さん女房の春が何事にも不器用な夫に献身的に尽くす。

2人の包丁勝負が見ものだ。

この内助の功と夫婦の絆が映画のメーンディッシュとなる。

(c)2013「武士の献立」製作委員会

その主菜を盛り付けた皿が加賀騒動といえよう。

藩に激震をもたらした動乱の最中、登場人物がどのように動き、翻弄されたのか、そこが要になっている。

歴史の荒波がこの時代劇に計り知れない重みを与えた。

副菜も豊富だ。

安信の秘められた恋、春が慕う藩主の側室、真如院(夏川結衣)や安信の親友、定之進(柄本佑)の行く末……。

そして朝倉雄三監督の細部にこだわった丁寧な演出が隠し味として生かされている。

伝内と安信親子が著したレシピ本「料理無言抄」を基に再現された郷土料理の数々。

カメラが舐めるようにとらえたその映像に目を見張らされた。

とりわけ新藩主着任祝いの宴で供された饗応料理の淡彩ながらも、豪勢な膳は圧巻の一言。

テレビドラマ「半沢直樹」で良妻に扮した上戸が、それを凌駕する女房役を凛として演じた。

和食がユネスコ世界無形遺産に登録されたのはタイムリーだった。

2時間1分

★★★★(見逃せない)

☆大阪ステーションシネマほかで公開中

(日本経済新聞2013年12月13日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

『日本に初めて映画を持ち込んだ男~大阪の実業家、荒木和一』の拙稿が『大阪の歴史』に載りました!

『日本に初めて映画を持ち込んだ男~大阪の実業家、荒木和一』の拙稿が『大阪の歴史』に載りました!

『日本に初めて映画を持ち込んだ男~大阪の実業家、荒木和一~』 こんな題名の拙稿が大阪市史編纂所の紀要『大阪の歴史』86号に掲載されました。 昨年秋に上梓した『大阪「映画」事始め』(彩流社)に盛り込めな …

オリジナル・カクテルの逸品「雪国」、その背景を探るドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』

オリジナル・カクテルの逸品「雪国」、その背景を探るドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』

「雪国」――。 川端康成の小説を彷彿とさせるカクテルがあります。 Ⓒいでは堂 グラスのふちに白い砂糖をつけたスノースタイルと底に沈むグリーン・チェリーの美しさ。 この2つが絶妙なるアンサンブルを奏でて …

さよなら、ありがとう、梅田ガーデンシネマ the Party~!(^^)!

さよなら、ありがとう、梅田ガーデンシネマ the Party~!(^^)!

関西のミニシアターの雄として18年間、名作の数々を上映してきた梅田ガーデンシネマ。   2月に閉館されましたが、昨夜、「Thank You & Farewell(ありがとう、さよなら)梅田ガー …

『大阪春秋』の最新号に拙稿が載っています!

『大阪春秋』の最新号に拙稿が載っています!

季刊郷土誌『大阪春秋』の第180号が届きました! 今号の特集は『メディアと上方の芸能』。 ぼくは『映画と上方の芸能・演芸~切っても切れない間柄』と題し、映画黎明期から今日までの両者の〈密な絆〉について …

日本初の映画上映地はなんばだった! 南海電鉄の情報紙に大きく掲載されました~(^.^)/~~~

日本初の映画上映地はなんばだった! 南海電鉄の情報紙に大きく掲載されました~(^.^)/~~~

南海電鉄の情報紙『NATTS(ナッツ)』4月号にドカーンと出ました! カラーでこんなに大きく写真が載ったのは初めて。 121年前の明治29年(1896)12月、大阪・難波の福岡鉄工所で、心斎橋の舶来品 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。