この映画、小品ですが、ええ味を出しています。
胸にジーンときました~(*^^*)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
日本だけでなく、お隣の中国でも大きな問題になってきた超高齢化社会。
その現状を踏まえ、人生最後の輝きを求めて炸裂させるお年寄りパワーを爽やかに描き上げた。
コミカル風味で包み込んだ人情ドラマだ。
監督は『こころの湯』(2001年)や『胡同(フートン)のひまわり』(06年)で家族のふれ合いをノスタルジックな映像の中で紡ぎ出したチャン・ヤン。
本作でもその作風を崩さず、家族のあり方を直視する。
妻を亡くし、老人ホームに入所したグォ(シュイ・ファンシャン)は家族から見放され、生きる希望を失っている。
この手の映画でよく見られるクセのある主人公とは違って、いたって平凡。
むしろ地味な男だ。
そんな彼の友人で、ホームのリーダー的存在のチョウ(ウー・ティエンミン)が人気テレビ番組「仮装大賞」への出場を提案する。
みな乗り気。
1人拒み続けていたグォもいつしか「変身」に夢中になる。
その様子を、ユーモラスな練習風景を絡ませながら綴っていく。
病気、過去のしがらみ、疎遠になった家族への思い、死への恐怖。
誰もが抱える重石を払拭するかのように無邪気にはしゃぐ姿は実にほほ笑ましい。
ベテラン俳優のいぶし銀の味が光る。
自然体。
それでいて独特なトーンを銀幕にかもし出す。
仮装の演技は文句なく巧かった!
グォと絶縁状態にある息子との確執が物語の軸となる。
そこに孫を介在させた。
監督の志向性とはいえ、その展開はやや陳腐に思えた。
一ひねりほしかった。
ホームを集団脱走し、おんぼろバスに乗ってひのき舞台へと向かう終盤が寓話的で面白い。
青空の清澄さと草原の開放感。
老人たちの眩い表情が目に焼き付く。
生きることは楽しむこと。
それを飾り気なくストレートで伝える。
このわかりやすさが心に響いた。
1時間44分
★★★(見逃せない)
☆大阪・シネマート心斎橋で公開中
以降、順次公開、京都みなみ会館、神戸・本町映画館
(日本経済新聞2014年1月10日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)