武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

映画の地を訪ねて(10)~香川・観音寺『青春デンデケデケデケ』

投稿日:2011年12月7日 更新日:

日々、ギターを弾いているせいか、音楽が絡んだ映画には自ずと興味が湧きます。
こんな青春映画がありましたね。
大好きな作品です。
     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
デンデケ
テケテケテケテケ。
ベンチャーズの『パイプライン』のイントロを初めて聴いた時、脳天にガツーンと衝撃を受けた。
小学5年生のぼくにはちと難解な曲だったが、一生忘れ得ぬ思い出だ。
それを「電気的啓示」と表現したのが、『青春デンデケデケデケ』(1992年)の「ちっくん」こと藤原竹良(林泰文)。
65年3月、中学卒業間際にエレキの洗礼を受け、高校に入るや、バンド結成に奔走する。
瀬戸内海に面した香川県観音寺市出身の作家、芦原すなお氏が自身の体験を綴った青春譚を大林宣彦監督がフィルムに焼き付けた。
手持ちカメラで撮った映像を短いショットでつなぎ、遊び心を加味した痛快作。
JR観音寺駅近くの観光案内所でレンタサイクルを借り、女性スタッフお勧めの讃岐うどん店でまずは腹ごしらえ。その後、撮影スポットを巡った。
映画は全編、同市で撮影された。
5人のバンドメンバーが在籍していた県立観音寺第一高校、財田川に架かるレンガ橋(琴弾橋)、琴弾公園のタイコ橋……。
観音寺(1)
ペダルをこげば、銀幕に映った光景が次々と現れる。
「あの時、ここで撮影を見とった」
「映画で町が有名になってなぁ」
写真を撮っていると、誰かれともなく声をかけてくる。
土地柄なのか、気さくな人が多い。
メンバーは3年生の文化祭で、『のっぽのサリー』や『ジョニー・B・グッド』などを披露し、エネルギーを炸裂。
その後、各自がわが道を歩み始める。
全てが終わった。
達成感のあとに去来する虚脱感。
切ない。
進路で悩むちっくんが、寺の跡取り息子の富士男(大森嘉之)に相談する。
この青年、妙に大人びていておかしかった。
2人の眼下には街のシンボル「銭形」。
東西122㍍、南北90㍍の巨大な寛永通宝の砂絵だ。
それを一望できる岩の上に立った。
観音寺☆
「『銭形』を見たら、お金に不自由しないよ」
ボランティア・ガイドのおじいさんの言葉を信じ、“古銭”を瞼に焼きつけ、有明浜沿いに約2・5㌔北上し、室本町へ。
バンドの練習場所だった富士男のお寺、羅漢寺がそこにある。
静謐な町並みに心が和む。
「仏事の場面に主人と出演したけれど、後ろ姿しか映っていなかったわ」
近くに住む清水正子さん(91)がケラケラ笑った。
ロックに打ち込む高校生の眩しいほどピュアな青春。
カッコ悪くても、ガチンコでぶつかることの素晴らしさをこの映画は伝えていた。
あのころを懐かしく思えて仕方がない。
あゝ、ギターを弾きたくなった。
(読売新聞2011年7月12日朝刊『わいず倶楽部』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。