武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

スリリングな戦後秘話~『終戦のエンペラー』

投稿日:2013年8月7日 更新日:

昨夜、ポルトガルから無事に帰ってきました。

 

向こうの爽やかな暑さに慣れきってしまったので、大阪のコテコテの暑さはかなり堪えます。

 

ポルトガル紀行は、フェイスブックで随時、アップしてきましたが、ブログでも画像をたっぷり盛り込んで、報告したいと思っています。

 

乞うご期待を~。

 

帰国第一弾のアップは、映画の原稿です。

 

『終戦のエンペラー』

 

これはなかなか見させる映画でした。

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

ⒸFellers Film LLC 2012 ALL RIGHTS RESERVED

実に興味深い戦後秘話。

 

敗戦後、日本の命運を分かつ決断がいかにしてなされたのか、その過程を緊迫感溢れる映像で明らかにする。

 

史実に基づくフィクション。

 

ハリウッドが初めて取り組んだ分野である。

 

1945年、無条件降伏した日本にGHQ(連合国軍総司令部)の最高司令長官マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が到着。

 

その直後、部下のフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に極秘の特命を出す。

 

それは天皇の戦争への関わりを探ること。

 

つまり国家元首を審判するか否か。

 

GHQのみならず日本にとっても最大の懸案事項だ。

 

その裏にマッカーサーの思惑が見え隠れする辺り、非常に面白い。

 

フェラーズは実在した人物で、日本文化の専門家。

 

戦前、米国留学していた日本人女性アヤ(初音映莉子)との恋愛が脇筋となる。

 

本筋の重みを鑑みると、それがややくどく感じられる。

 

日本人の通訳を伴い、准将が10日間、次々に重要人物と接見する。

 

しかし事が事だけに、みな口が堅い。

 

日米の価値観の相違も障壁となり、さらにGHQ内部にも反発分子がいる。

 

当然、調査は難航を極める。

 

知らない事実が多く、あまりのスリリングさに酔わされた。

 

『日本のいちばん長い日』(1967年)で描かれた玉音放送をめぐる軍部との衝突がかくも激しいものだったとは……。

 

英国人のピーター・ウェーバー監督は、ある意味、第三者ゆえ、終始、客観的に事態を見据える。

 

それが物語に一切ブレを生じさせなかった。

 

未知なる世界に観る者を導く旅先人のように主人公を仕立てた手腕は評価したい。

 

天皇とマッカーサーとの「世紀の会見」。

 

荒廃した日本が戦後復興への第一歩を踏み出した歴史的瞬間の背景が読み取れた。

 

それだけでも大きな収穫だった。

 

1時間47分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆全国でロードショー中

 

(日本経済新聞2013年7月26日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。