© La Petite Reine – Studio 37 – La Classe Américaine – JD Prod – France 3 Cinéma – Jouror Productions – uFilm
本年度のアカデミー賞で作品、監督、主演男優など5部門を受賞した話題作です。
この映画、大好きです!!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
世は3Dの時代。
どんどん技術革新が進む中、何とモノクロのサイレント映画が作られた。
わ~っ、映画の原点。
活動大写真や!
それだけで心がときめいた。
と同時に、チャップリン映画ならまだしも、それで長編として持ちこたえられるのかなと余計な心配もした。
でも杞憂に終わった。
主役のニヤけた顔を目にした瞬間、なぜか安堵感を覚えたから。
サイレントからトーキーへ。
1927年、映画界に巻き起こった大激震を背景に、無声映画にこだわるハリウッドの大スター、ジョージ(ジャン・デュジャルダン)と時代の波に乗る新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)の成り行きが懐かしのメロドラマ風に綴られる。
シンプル・イズ・ベスト。
それを絵に描いたような展開が非常に心地よい。
容赦のない地位の逆転。
一世を風靡した者が落ちぶれると、何とも惨め。
あゝ、忘れられぬ過去の栄光。
そこに言い知れぬペーソス(悲哀)が生まれる。
主人公のやつれた姿が、『サンセット大通り』(50年)のグロリア・スワンソン扮する大女優とだぶって仕方がなかった。
ペピーの恋心がいじらしい。
彼女が端役に甘んじていたとき、憧れ、尊敬し、愛するジョージのタキシードに自分の腕を通すシーンがある。
言葉なんて要らない。
映像と音楽だけで見せ切った。
「好きよ」「傍にいて」などと陳腐なセリフで喋られると、興ざめしてしまう。
この奥ゆかしさがたまりまへん。
ぼくは陶酔し、もうメロメロになった。
とりわけペピーのトロンとした大きな瞳が素晴らしい。
ほんま、ヤバイほどの名場面でしたわ。
サイレント映画へのオマージュ(憧憬)。
なので、往年の名作のパクリが散りばめられており、思わずニヤリとさせられた。
確かにオリジナリティーには欠けるが、それでも観させる。
時代がかった演出、愛犬アギーの巧演、絶妙な「音」の使い方、フィナーレの弾けるような高揚感……。
どれも堪能できた。
これがフランス映画というのがまたうれしい!
監督はミシェル・アザナヴィシウス
1時間41分
☆4月7日から全国ロードショー。
(映画ファンのための感動フリーペーパー『シネルフレ』2012年春の特別号の拙稿より)
『アーティスト』~今だからこそ、サイレントのメロドラマ
投稿日:2012年3月21日 更新日:
執筆者:admin