武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

日本で一番、忙しい監督? 三池崇史さんにインタビュー

投稿日:2011年9月6日 更新日:

三池(1)
どことなくヤンチャそうな風貌がたまりませんねぇ。
市川海老蔵主演の時代劇大作『一命』(10月15日公開)のキャンペーンで、先日、大阪に来た三池崇史監督の記者会見にお邪魔しました。
この映画のクランクアップ直後、海老蔵があの“事件”を起こし、一時はお蔵入りになるかと思われた、いわくつきの作品です。
三池監督の海老蔵評は……。
「本当に日本の役者らしい人。歌舞伎の人だから、やはり時代劇では光りますね」
すごく評価していました。
海老蔵の映画と言ってもいいくらい、彼に焦点が当てられていました。
「ただ、演技が形にはまりすぎるところがあって、『歌舞伎ではないんですよ』とよく言いました。まぁ、今は歌舞伎以外のところで芸をみがき、それが将来、歌舞伎で大いに生かされてくると思いますよ」
海老蔵は自分の撮影シーンが終わっても、セットの隅から役所広司の演技をじっと見つめていたそうです。
本作は、1962年に小林正樹監督が仲代達也主演で撮った名作『切腹』のリメーク。
昨年公開された『十三人の刺客』もそうでした。
「オリジナルの映画には敬意を表しています。50年前の日本映画にはパワーがありましたね。とにかく撮影所が怖かった。平気で遅刻してくる人がいて、やっかいな感じ。今はみな優等生になっています。協調性を重んじるような。そうでないと、排除される。いや、1人だけいた。小栗旬。あいつは二日酔いで平気で遅れてきますわ(笑)」
三池(3)
3Dがこの映画の売り。
「別に3Dでもいいんじゃないですか~。ぼくはそんなスタンスです。映画はこれまで奥行きを出すのに苦労してきました。主に照明を駆使して。でも3Dという技術が生まれ、ごく自然にそれが可能になった。いいと思いますよ。映画を作る上でひとつ選択肢が増えた。そういうことです」
アクション、バイオレンス、ホラー、コメディー、時代劇……と何でも演出する。
早撮りでよく知られており、ひっきりなしにオファーが舞い込んできているそうです。
この映画とほぼ同時に、マンガを実写化した『忍たま乱太郎』を撮っていたというから、恐れ入ります。
「他の監督さんは、よく似た映画ばかり撮ってますよね。おれの映画はこうなんだと。そうでないのは捨てている。昔、助監督として先輩諸氏を見ていたら、映画を作るのが何だか辛く思えてきましてね。自分で自分を縛っているような」
ここで、面白いたとえ話を。
「毎食、ラーメンばかり食べてられないでしょ。ぼくはいろんなモノを食べます。それを映画製作にも反映させているだけ。すべては原作者にリスペクトして」
だから、これからも依頼されれば、どんなジャンルでもどんどん作り続けていくとか。
「実は、ホンマもんのポルノを撮りたいんです。ウソじゃなくて。でも、今の日本では無理でしょ。観客が邪魔をする。多くの人に観てもらうためには妥協しないと」
大阪・八尾の出身。
ラガーとして活躍し、ラグビーの強い大阪工業大学へ進学し、ラグビー部に入部するも、全国から並外れた実力派の選手ぞろいで、こら、歯が立たんと夏の合宿前に退部。
その後、映画の世界に飛び込みはりました。
三池(4)
51歳。
エネルギーがみなぎっていました。
こういう人、大好きです。
子供っぽいところがあって。
肝心の『一命』のぼくの評ですか?
それは後日、映画エッセーとして、ちゃんと書かせてもらいます。

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。