余震が多いですね。
一体、いつまで続くのでしょうか。
自然よ、もうこれ以上、被災地をいじめないでほしい~!!
そう願わざるを得ない心境です。
大学の講義を終え、そんなことを考えながら、地下鉄に乗ると、ぼくの隣に立っていた中年男性が日経新聞の夕刊を食い入るように見ていました。
何の記事なのだろう。
ちょっぴり気になり、その男性が読んでいた紙面に視線を流すと、何とぼくが執筆した映画の原稿でした。
日本映画『ダンシング・チャップリン』です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
©2011 フジテレビジョン/東宝/アルタミラピクチャーズ/電通/スオズ
喜劇王チャップリンに周防正行監督が迫った。
といっても、ごく普通のドラマではない。
チャップリン映画を題材にしたフランスのバレエ作品を映像に焼き付けたのである。
それも舞台裏を余すことなくさらけ出し、異色ドキュメンタリー映画に仕上げた。
取り上げたのは、仏バレエ界の大御所ローラン・プティ(振付師)が1991年に発表した映画と同じタイトルの作品。
「キッド」「街の灯」などの名場面を、チャップリンに扮したイタリア人バレエダンサー、ルイジ・ボニーノを中心に踊りで再現した。
映画は2幕で構成。
第1幕は舞台を撮影するまでの60日間を追った。
練習風景が主だが、監督の妻で、2009年に引退したバレリーナ歴36年の草刈民代とボニーノとの絡みが圧巻だ。
大先輩のダンサーに敬意を表し、原点に戻ってステップを踏む彼女のひたむきな姿に引き込まれる。
監督とプティとの衝突には驚かされた。
警官が踊るシーンの屋外撮影を望む監督に対し、断固拒否する振付師。
映画人と演劇人の表現方法の違いをまざまざと見せつける。
5分間の休憩の後、第2幕が始まる。
これからバレエ作品の鑑賞タイムだ。
そのことを暗転によって、観る側に意識づける。
いい演出だと思う。
オリジナル作品の20場を13場に絞り込み、東宝スタジオに集結した7人のダンサーが至芸を披露。
ここでも草刈とボニーノの身体表現の素晴らしさに目を奪われる。
「黄金狂時代」でチャップリンがひと目惚れする酒場の女に扮した彼女の艶っぽさは尋常ではない。
舞台空間をカメラが自在に縫い、映画としてのバレエ作品に変質させた。
観終わってから、チャップリンが無性に愛おしく思えてくる。
そんな映画だった。
2時間11分
★★★★
☆4月16日(土)より、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて公開!
(日本経済新聞2011年4月15日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
周防正行監督の新境地~『ダンシング・チャップリン』
投稿日:2011年4月15日 更新日:
執筆者:admin