秋が深まってきました。
今春卒業し、大阪の出版社で働いている教え子と先日、キタにあるビートルズのライブハウス『キャバーン・クラブ』に足を運びました。
近況を語り合っているうち、22歳の彼がビートルズにはまり出していると言ったので、想定外の展開に~。
ここは懐かしのスポットです。
大学生のころから、時々出向いていました。
この日も相変わらずビートルズのコピーバンドが大熱演~♪
しばし青春時代に浸ることができ、満足、満足~。
そのビートルズの中で一番個性が強かったジョン・レノンの青年期を描いたイギリス映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』が公開中です。
日経新聞文化欄に書いた原稿をどうぞ。
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ⓒ2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.
ビートルズのメン、バーとして世界に羽ばたいたジョン・レノン。
今年は生誕70年。
そして銃弾に倒れて30年を迎える。
音楽以外にもいろんな分野で若者に刺激を与えたジョンの原風景を瑞々しい映像で綴った青春映画である。
1950年代半ば、英国西部の港町リバプールの街をティーン・エイジャーのジョンが駆け抜ける(アーロン・ジョンソン)。
この躍動的な冒頭シーンで一気に引きずり込まれた。
内容はしかし、極めてシリアスだ。
幼い頃から伯母のミミ(クリスティン・スコット・トーマス)に育てられたジョンが、近くに実母ジュリア(アンヌ=マリー・ダフ)が暮らしていることを知る。
反抗期とあって厳格なミミを疎ましく思い、自由奔放なジュリアに急接近。
とはいえ彼女には家庭があり、入り込めない。
対照的な2人の母親の間でもがき苦しむジョンの姿が痛々しい。
行き場のない孤独感と葛藤。
さらに母親はなぜ自分を捨てたのかという疑問が湧き出てくる。
そんな心のモヤモヤが音楽を創作することで解消されていく。
息苦しい話なのに、さわやかな印象を受けるのはそのためだろう。
ジュリアにバンジョーの弾き方を教えられ、にわかにジョンの表情が晴れ渡る。
その後、ポール・マッカートニーとの出会いによって自分の道が決定づけられ、不良少年が見違えるほどカッコよくなっていく。
人生の転換期だ。
皮肉屋で反骨精神旺盛なジョン・レノンのルーツがこの時期にあったのがよくわかる。
しかし単なる伝記映画ではない。
1人の青年の成長物語に仕上がっており、ぼくのようなビートルズファンでなくても十分、楽しめる。
徹底取材に基づいた女性監督サム・テイラー=ウッドのこだわりの演出に思わずニヤリとした。
1時間38分
★★★★(見逃せない)
(日本経済新聞2010年11月5日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
ジョン・レノンの原風景~映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』
投稿日:2010年11月9日 更新日:
執筆者:admin