武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

ジョン・レノンの原風景~映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』

投稿日:2010年11月9日 更新日:

秋が深まってきました。
今春卒業し、大阪の出版社で働いている教え子と先日、キタにあるビートルズのライブハウス『キャバーン・クラブ』に足を運びました。
近況を語り合っているうち、22歳の彼がビートルズにはまり出していると言ったので、想定外の展開に~。
ビートルズ
ここは懐かしのスポットです。
大学生のころから、時々出向いていました。
この日も相変わらずビートルズのコピーバンドが大熱演~♪
しばし青春時代に浸ることができ、満足、満足~。
そのビートルズの中で一番個性が強かったジョン・レノンの青年期を描いたイギリス映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』が公開中です。
日経新聞文化欄に書いた原稿をどうぞ。
     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
ノーウェアボーイ
ⓒ2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.
ビートルズのメン、バーとして世界に羽ばたいたジョン・レノン。
今年は生誕70年。
そして銃弾に倒れて30年を迎える。
音楽以外にもいろんな分野で若者に刺激を与えたジョンの原風景を瑞々しい映像で綴った青春映画である。
1950年代半ば、英国西部の港町リバプールの街をティーン・エイジャーのジョンが駆け抜ける(アーロン・ジョンソン)。
この躍動的な冒頭シーンで一気に引きずり込まれた。
内容はしかし、極めてシリアスだ。
幼い頃から伯母のミミ(クリスティン・スコット・トーマス)に育てられたジョンが、近くに実母ジュリア(アンヌ=マリー・ダフ)が暮らしていることを知る。
反抗期とあって厳格なミミを疎ましく思い、自由奔放なジュリアに急接近。
とはいえ彼女には家庭があり、入り込めない。
対照的な2人の母親の間でもがき苦しむジョンの姿が痛々しい。
行き場のない孤独感と葛藤。
さらに母親はなぜ自分を捨てたのかという疑問が湧き出てくる。
そんな心のモヤモヤが音楽を創作することで解消されていく。
息苦しい話なのに、さわやかな印象を受けるのはそのためだろう。
ジュリアにバンジョーの弾き方を教えられ、にわかにジョンの表情が晴れ渡る。
その後、ポール・マッカートニーとの出会いによって自分の道が決定づけられ、不良少年が見違えるほどカッコよくなっていく。
人生の転換期だ。
皮肉屋で反骨精神旺盛なジョン・レノンのルーツがこの時期にあったのがよくわかる。
しかし単なる伝記映画ではない。
1人の青年の成長物語に仕上がっており、ぼくのようなビートルズファンでなくても十分、楽しめる。
徹底取材に基づいた女性監督サム・テイラー=ウッドのこだわりの演出に思わずニヤリとした。
1時間38分
★★★★(見逃せない)
(日本経済新聞2010年11月5日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

今朝、ABCラジオ「おはようパーソナリティ」にゲスト出演しました~(^_-)-☆

今朝、ABCラジオ「おはようパーソナリティ」にゲスト出演しました~(^_-)-☆

朝、散歩がてらに自宅から歩いてABC朝日放送へ。 そして午前8時ごろから、朝のワイド番組「おはようパーソナリティ」にゲスト出演してきました。   エンタメ映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に特化し …

意味深なタイトルの家族映画~『ハッピーエンド』

意味深なタイトルの家族映画~『ハッピーエンド』

心がざわめく問題作を撮り続けるオーストリアの名匠ミヒャエル・ハネケ監督。 老夫婦の物語『愛、アムール』(2012年)から5年ぶりの新作はブルジョワ家庭に焦点を当て、家族の軋みをあぶり出した。 冒頭から …

今年を振り返って……(^_-)-☆

今年を振り返って……(^_-)-☆

昨年に続き、コロナ禍に振り回された2021年もいよいよ終幕が近づいてきました。 この1年を振り返ると、最大のトピックスはやっぱり初小説『フェイドアウト 日本に映画を持ち込んだ男、荒木和一』(幻戯書房) …

映画は「なんば」からはじまった!~12月7日(木)18:30~、難波の大阪府立大学サテライト・キャンパスで

映画は「なんば」からはじまった!~12月7日(木)18:30~、難波の大阪府立大学サテライト・キャンパスで

大阪と映画との深い関わりを探った拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)を上梓して、早1年以上が経ちました。 難波が映画興行(仏リュミエール商会のシネマトグラフ)のみならず、映画上映(米エジソン商会のヴァ …

旧ソ連版の忠犬ハチ公物語~日露合作映画『ハチとパルマの物語』(28日公開)

旧ソ連版の忠犬ハチ公物語~日露合作映画『ハチとパルマの物語』(28日公開)

旧ソ連時代の1977年から2年間、モスクワ国際空港の滑走路で飼い主を待ち続けていたワンちゃんがいてたんですね。 パルマというジャーマン・シェパード。 まさにソ連版の忠犬ハチ公物語~❗ 向 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。