武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

映画はやっぱり映画館で観ないと~午前十時の映画祭~♪

投稿日:2010年4月16日 更新日:

独裁者
うちで気軽に映画を観ることができるようになって久しいですが、映画はやっぱり映画館で観るに越したことはない。
これがぼくの持論です。
映画作品は、映画館で上映されるように創られているからです。
もっとも昨今、最初から2次使用(ビデオ)を念頭に置いて撮っている映画も少なからずありますが……。
でも、うちでゴロンとソファに寝転がってテレビ画面で映画を鑑賞するのは、非常に受け身的な観方だと思うんですよ。
貴重な時間をやりくりし、交通費と入場料を支払って映画館に入り、暗い空間の中で大きなスクリーンと対峙する。
これぞ能動的な観方です。
感動の度合いも、家で観たときと比べ物にならないほど大きいはずです。
ぼくは学生のときに映画にのめり込みましたが、当時はビデオなんてなく、すべて映画館で観ていました。
それこそ毎日、エネルギーをめいっぱい注いで観ていたので、今でも結構、ディテールを覚えていますよ。
それが今日、映画エッセーなど映画に関する文章を職業として書いている自分の原点になっています。
それほどまで映画館で観る映画は、人生に刺激を与えてくれます。
そんなぼくの気持ちを知ってか(?)、今年の2月から全国の一部のTOHOシネマズで『午前十時の映画祭』が始まりました。
1950~70年代の懐かしい洋画、それも娯楽映画の名作を毎朝、1本上映しているんです。
『ニュー・シネマ・パラダイス』『スティング』『裏窓』『追憶』『太陽がいっぱい』……。
全部で50作~!
かなり盛況だとか。うれしいです。
きょうTOHOシネマズなんばで上映されたのは、『チャップリンの独裁者』(1940年)。
学生のころ観まくっていたチャップリン映画の力作です。
いつぞや、こんなエッセーを書きました。
興味があれば、一読ください。
  *       *       *       *       *
「喜劇王」の異名をとるチャールズ・チャップリン。
俳優、監督、脚本家、作曲家と多彩な才能を発揮した稀代のコメディアンはサイレント(無声映画)時代に黄金期を築き、1920年代にトーキーの時代が到来しても、なおもサイレントにこだわり続けたが、トーキーの第1作『独裁者』(40年)は堰を切ったように反戦・反ファシズムの声で充満させた。
この映画の撮影が始まったのは、第2次大戦勃発の2週間後だった。
独裁者ヒトラーのナチス・ドイツがヨーロッパに侵略の触手を伸ばし始めたときで、ユダヤ人への迫害も激しさを増していた。
ヒトラーと同年齢のチャップリン(4日早い生まれ)は、自由と民主主義を抹殺したヒトラーとファシズムをとことん嫌悪し、それに挑戦状をたたきつけるかのように『独裁者』を製作した。
ナチス・ドイツを模した架空の国トメニアの独裁者ヒンケルと、彼に瓜ふたつのユダヤ人の床屋にチャップリンが扮した痛烈な風刺コメディーである。
当時、イタリアもムッソリーニ率いるファシスト党の独裁政権下にあった。
映画のなかでヒンケルと同盟国の元首ナバロニが互いに空威張りするシーンを見せ、2人の独裁者を徹底的に揶揄していた。
そしてクライマックス。ヒンケルに間違われた床屋が数万の聴衆を前にして、延々6分間にもわたり、大演説をぶった。
それはまさにチャップリンの本音であった。
「ユダヤ人も白人も黒人も、互いに憎しみ合ってはいけない。思想だけあって、感情がないと、人間性を失う。知識よりも思いやりこそが必要なのです……」
ヒューマニズムに基づいた理想論。
しかし山高帽、ステッキ、ドタ靴の浮浪者スタイルを捨て、全世界に対し、真正面から“けったいな現状”を打開しようと訴えたチャップリンの心意気と勇気にぼくは敬意を表したい。
ドイツと友好関係にあった日本では、この映画は封印され、戦後の60年になってようやく公開された。
“当事者”のヒトラーはこっそり観たらしいが、なにも感想を言わなかったという。
「チャップリン、恐るべし」。内心はきっとビクついていたに違いない。

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。