©Dolphin Productions
きょうもまた映画です。
映画ばかりつづきますが、映画は3度のメシよりも好きなので、しかたがありません。開き直ります(笑)
『パチャママの贈りもの』……、胸にジーンときました。
疲れているときに観たら、すごく元気をもらえるかもしれませんよ。
超オススメです~!
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南米大陸を南北に貫くアンデス山脈。生きているうちに、一度は訪れたいと思っているところ。
フォークロア(アンデスの民俗音楽)がこだまする楚々とした自然に身を委ねてみたい……。
だからボリビアを舞台にしたこの映画に、ぼくは冒頭から惹かれた。
一面の銀世界。それが雪ではなく、塩なのだ。
世界最大の塩湖、ウユニ湖。そこで塩を採掘し、キャラバン(行商)に出る父親と13歳の息子を追ってゆく。父子が一緒に旅立つのはこれが初めて。
彼らはインカ帝国(13~16世紀)を築いた先住民の末裔で、スペイン語だけでなく、母語のケチュア語を話す。
先祖代々、固有の文化、風習、信仰を守り続けており、それを誇りに思っている。
リャマの背中に塩の塊をくくりつけ、3か月がかりで集落を巡る。
塩は人間が使うのではなく、家畜のミネラル補給のために与えられる。
その対価は農作物やニワトリといった現物。つまり物々交換だ。
行く先々で父が住民から慕われている姿を息子が眼にし、父の仕事を理解する。そうして自分自身が成長していく。
このストーリー展開と確固とした親子の絆は、中国映画『山の郵便配達』(1999年)を彷彿させる。
本当に心地の良い映画だった。
それは優しさに満ちあふれているから。
困っている人がおれば、ごく自然に手を差し伸べる。頼みごとがあれば、嫌な顔ひとつ見せずそれを受け入れる。しんどくても、笑顔で酒を酌み交わす。
父親の行動は見返りなどいっさい求めていない。常に他者・相手を思いやり、いとおしむ気持ちでいっぱいなのだ。
自然との共存。それが生きる根底にある。みな自然に対して畏敬の念を抱いている。
その総体が「パチャママ」。彼らの言葉で「母なる大地」を意味する。それは絶対的なもの。
「パチャママ」に感謝する気持ちがあれば、幸せに暮らせる。そう信じている。
それを突き詰めていけば、日常を大切にすることにつながる。
大らかで謙虚な生き方。憧れるな~。
限りなくドキュメンタリーに近いフィクションだった。
松下俊文監督(59)は役者に起用した現地の人たちを「素のまま」に演じさせ、ドラマ色を排除しようとした。そんなふうに3年間、腰を据えて撮ったという。
20年来ニューヨークで日本向けのテレビ番組を制作してきた松下監督は、「9.11」(2001年の同時多発テロ)を目撃したのを機に、人生を考え直したいとボリビアへ旅し、ウユニ湖に来て映画化を決意した。
そのときに感じた「生き返った!」という思いが、映像の端々からにじみ出ていた。
(1時間42分)
☆関西では、大阪・第七芸術劇場で公開中。1月30日から京都シネマで封切られます。
『パチャママの贈りもの』~心が洗われる!
投稿日:2010年1月25日 更新日:
執筆者:admin