武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

これぞ21世紀のマカロニ・ウエスタン~『ジャンゴ 繋がれざる者』

投稿日:2013年3月1日 更新日:

めちゃめちゃ面白かった!!!

 

騙されたと思うて、観に行ってください。

 

絶対、納得しますから~(^o^)v

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

1960年代の懐かしきマカロニ・ウエスタンの世界に浸らされた。

 

しかも主人公が黒人という異色作。

 

クエンティン・タランティーノ監督は持ち前の過激な演出に拍車をかけ、申し分のない娯楽大作に仕上げた。

 

奴隷解放宣言の5年前(1858年)、鎖に繋がれた身から凄腕のガンマンに変身するジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の物語。

 

そこに自分と同じ境遇に置かれた愛妻(ケリー・ワシントン)を取り戻すというピュアなラブストーリーを絡ませる。

 

ジャンゴを解放し、行動を共にするドイツ人の賞金稼ぎシュルツ(クリストフ・ヴァルツ)の存在がひと際光る。

 

智謀・智略に長け、慇懃無礼なこの人物が実に魅力的なのである。

 

奴隷制度を嫌悪し、容赦なく白人に銃を向けるクールさがたまらなくおかしい。

 

どこか浮いているシュルツと一途なジャンゴとの最強コンビはまさに称賛に値する。

 

もう一組、白人と黒人のペアが登場する。

 

暴君丸出しの大農園主キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)と農園の黒人執事スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)。

 

この老人が非常にクセ者で、陰湿な嫌らしさをまき散らす。

 

ジャンゴを見下す眼差しが何とも不気味。

 

タランティーノ映画には欠かせないキャラクターだ。

 

撃ち合いのシーンは予想以上に強烈。

 

畳み掛けるように凄まじい描写を次々に展開させる。

 

さらに当時の黒人奴隷の過酷な現状を露骨にあぶり出し、あえて差別用語の「ニガー」(黒人の蔑称)を連発させた。

 

単純に正義がまかり通るハリウッドの純正西部劇に反旗を翻し、リアリズムを貫き通す。

 

その中で任侠映画のごとく人情の機微を浮き彫りにする。

 

映画造りが本当に巧い。

 

上映時間の長さを忘れさせるほど濃厚な1作だった。

 

2時間45分

 

★★★★(見逃せない)

 

3/1(金)大阪ステーションシティシネマ他全国公開

 

配給:ソニー・ピクチャーズ

 

【R15+】

 

(日本経済新聞2013年3月1日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。