武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『今度は愛妻家』~夫婦善哉の現代版!?

投稿日:2010年1月22日 更新日:

愛妻家111
(C) 2010「今度は愛妻家」製作委員会
いま公開中の日本映画『今度は愛妻家』……。
ヨトエツと薬師丸の夫婦がなかなかええ味を出しております。
シネマエッセーをどうぞ。
    *      *      *      *     *
グータラで勝手気ままな夫と、小言は多いが、明るく健気に尽くす妻。
大阪映画の名作「夫婦善哉」(1955年)の現代版ともいえる夫婦が織りなす物語。
切ないけれど、ほんわかと温かく、非常に心地のいい時間を味わえた。
同名の演劇(中谷まゆみ脚本)を行定勲監督が映画化した。
軽やかで気負いのない演出が、どこかユーモラスな作風に仕上げ、映像に奥行きを出していた。
劇を意識してか、長回しの撮影も効果的だった。
東京の下町にあるカメラマン俊介(豊川悦司)の事務所兼自宅が主舞台になるが、冒頭は燦々と陽光が降り注ぐ開放的な沖縄のビーチ。
愛妻家サブ
(C) 2010「今度は愛妻家」製作委員会
妻のさくら(薬師丸ひろ子)ははしゃいでいるのに、俊介はいたってクール。
結婚10年目。子作り旅行に来たのだが、明らかに不協和音が……。倦怠期?
1年後、俊介は独身生活を楽しんでいる。さくらが箱根へ旅に出かけたまま戻ってこないのだ。
ところが突然、彼女は帰宅し、「好きな男ができた」と告白、離婚を申し出る。
意表を突く展開。ここから妻に対する夫の潜在意識が紡ぎ出され、ドラマは佳境に入る。
たいそう距離が隔たっていそうに思えても、実は根っこのところで結びついている。
そういう夫婦の絆を愛として浮き上がらせるのだ。
日常を細かく描写し、生活臭をきちんと出したことで、説得力があった。
豊川と薬師丸の息の合った演技が映像空間に花を添える。
女優志願の蘭子(水川あさみ)、生真面目な助手、誠(濱田岳)、オカマの文太(石橋蓮司)ら周りの人物も生きていた。
文太に扮した石橋の怪演に拍手したい。
終盤のカラクリが全てだ。多分に情緒的で、お涙頂戴のシーンだが、俊介が写真を撮れなかった理由が痛いほどわかった。
男が素直になれた瞬間。納得できた。
(2間11分)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。