武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

極私的映画ベストテン2008(洋画編)

投稿日:2009年1月6日 更新日:

今日は外国映画のベストテンを発表します。どういうわけか、中国、韓国などアジア映画が1本も入らなかったです。
1位:『シャイン・ア・ライト』(アメリカ)*ドキュメンタリー
(ミック・ジャガー、キース・リチャード、監督:マーティン・スコセッシ)
映像でしか体感できないほどのライヴ感に打ちのめされました。コンサート以上!! 人生の先輩としてストーンズの生きざまに憧れを抱きました。すごいパワーをもらった!

2位:『アメリカン・ギャングスター』(アメリカ)

(デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、監督:リドリー・スコット)
アフリカ系(黒人)マフィアの勃興を、ベトナム戦争を絡めて描いたところがおもしろい。1972年の物語。日本ではあさま山荘事件が起きた年やったんやな~と妙に感慨深かったです。
3位:『12人の怒れる男』(ロシア)
(セルゲイ・マコヴェツキィ、ヴァレンティン・ガフト、監督:ニキータ・ミハルコフ)
社会派映画の傑作と言われるシドニー・ルメット監督の『12人の怒れる男』(1957年)のリメークですが、現在のロシア情勢、チェチェン紛争をベースにして全く違った作品に仕上げていました。ロシア人はみな喋りなんや!
4位:『つぐない』(イギリス)
(キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、監督:ジョー・ライト)
典型的なイギリス映画。ちょっとしたウソによって、引き裂かれる恋人たちが非常に痛々しい。罪の重さに苦しむ妹もまた哀しい。深~い、深~い人生ドラマでした。
5位:『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(アメリカ)
(ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、監督:ポール・トーマス・アンダーソン)
人間の業とはなにかをえぐった力作。石油を探し当てる山師が人を信用せず、どんどん孤立していく様子に胸が痛くなりました。名優ダニエル・デイ=ルイスの迫真の演技に脱帽!!
6位:『4ヶ月、3週と2日』(ルーマニア)
(アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、監督:クリスティアン・ムンジウ)
1980年代、チャウシェスク独裁政権下のルーマニア。「産めよ増やせよ」の国策に反する中絶をテーマに、自由がない息苦しい社会を浮き彫りにしていました。得も言えぬ閉塞感と緊迫感。そこに時代を感じさせられました。
7位:『ラスベガスをぶっつぶせ』(アメリカ)
(ジム・スタージェス、ケイト、ボスワース、監督:ロバート・ルケティック)
スリリングな娯楽作。MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生たちが、ラスベガスで数学の才能を発揮し、ブラックジャックで大もうけ。実話というから恐れ入ります。この手の映画は大好きです。
8位:『バンク・ジョブ』(イギリス)
(ジェイソン・ステイサム、サフロン・バロウズ、監督:ロジャー・ドナルドソン)
これも実話。1971年、ロンドンで起きた貸金庫強奪事件を描いたクライム・アクションですが、事件の背後に王室のスキャンダルが関与しているところがこの映画のキーポイント。よくぞ再現できたと感心しきり。テンポもいい。
9位:『その土曜、7時58分』(アメリカ)
(フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、監督:シドニー・ルメット)
3位のところで触れた『12人の怒れる男』のオリジナルを手がけたシドニー・ルメット監督の最新作です。現在、84歳。そんなご高齢とはとても思えないほどエネルギッシュな映画でした。強盗事件を通して、家族のあり方をきちんと描いています。
10位:『いのちの食べ方』(オーストリア)*ドキュメンタリー
(監督:ニコラウス・ゲイハルター)
食材がどういうプロセスを経て、私たちの口に入ってくるのかを淡々と写すドキュメンタリー映画。インタビューは一切なし。あまりにも機械的に処理されている現状に、ただただ唖然……。食べ物を粗末にしてはアカンと思い知らされました。

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

無常観が漂う英国映画~『わたしを離さないで』

無常観が漂う英国映画~『わたしを離さないで』

きょうの日経新聞夕刊に載った映画の拙稿をどうぞ。     (c)2010 Twentieth Century Fox 限られた人生をいかに全うするべきか。 本質的なテーマに迫ったSF映画である。 とい …

舞台『フェイドアウト』アンコール公演が昨日からスタート!!

舞台『フェイドアウト』アンコール公演が昨日からスタート!!

舞台『フェイドアウト』のアンコール公演が昨日から、大阪市西区新町のイサオビルで始まりました。 広島から来阪していた主人公、荒木和一さんのお孫さん(久保田良枝さん)と午前中、谷町6丁目の隆祥館書店で落ち …

大阪アジアン映画祭2011~5日から開幕!

大阪アジアン映画祭2011~5日から開幕!

きょうから3月。 春の足音がどこからともなく聞こえてきますね。 この時期、恒例のイベント『大阪アジアン映画祭2011』が5日から開幕します。 アジア各国から出品される映画の一挙上映~! 見応えのある作 …

2015年 映画ベストテンの発表~(^_-)-☆

2015年 映画ベストテンの発表~(^_-)-☆

毎年、年末の「恒例行事」になっていますが、独断で(!?)でこの1年間に公開された映画のベストテンを発表します。   〈日本映画〉 1.『FOUJITA』監督:小栗康平 *日仏合作 オダギリジ …

なんと黒人刑事がKKKに潜入捜査!~『ブラック・クランズマン』(22日~公開)

なんと黒人刑事がKKKに潜入捜査!~『ブラック・クランズマン』(22日~公開)

ブラック・ムービー(黒人映画)の旗手、スパイク・リー監督が渾身の力を込めて撮った犯罪サスペンス。 約半世紀前の物語とはいえ、人種や宗教で分断が進むアメリカの今を浮き彫りにしている。 この監督初のアカデ …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。