武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

苦~いボンド・マティーニ

投稿日:2009年1月8日 更新日:

007シリーズの最新作『007/慰めの報酬』が24日から封切られます。22作目です。ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドとして、前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)以上に大熱演。最愛の女性ヴェスパーを失くして1時間後から物語がはじまります……。
ぼくがはじめてボンドを観たのは、中学2年の春休みでした。肉感的なボンド・ガール見たさに悪友と映画館に出かけたんです。上映作品は、シリーズ第1作『007は殺しの番号』(のちの『ドクター・ノオ』と改題)のリバイバル。
ニキビ面のぼくはビキニ姿のウルスラ・アンドレスに眼を奪われましたが、同時にショーン・コネリー扮するボンドにぞっこん惚れてしまいました。ほんま、カッコええおっさんやと思えたんです。そしてジェームズ・ボンドのような大人になろうと決めました!
そのカッコよさを決定づけたのが、ボンド・マティーニでした。ドライ・マティーニは、ドライ・ジンをベースにしてドライ・ヴェルモットを添加し、ステアしてつくりますが、ボンド・マティーニはウォッカがベース。しかもシェイクするんです。かなりあっさりした感じになります。もちろん中学生だったぼくはそんなこと知っているはずがありません。なんかわけのわからんカクテルくらいにしか思っていなかったのでしょう。
ともあれ、そのマティーニをさり気なく味わうボンドに男の色気を感じたんですよ、14歳のぼくが! どんな味がするのか気になって気になって、映画を観終えてから、友達の家でカクテルブックをひもとき、ボンドが口にしていたマティーニをつくろうと奮闘しました。ボトルがいろいろあったので、彼のオヤジさんは洋酒党だったのでしょうね。
ああでもない、こうでもないと言い合ってできあがった液体をひと口含んだ途端、2人してグェッと吐き出してしまいました。ヴェルモットがなかったので、養命酒を使ったのがいけなかった! これがぼくにとっての苦~いマティーニ初体験です。
『007/カジノ・ロワイヤル』で、ボンドが特製マティーニに恋人の名をとって、「ヴェスパー」と名づけていました。ドライ・ジン(銘柄はゴードン)を多めに使っており、従来のレシピと異なっていたので、驚きました。いったいどないなってるんかよぉわかりませんわ。
まぁ、それはそれとして、いつの日かバーで、「ウォッカのドライ・マティーニを。ステアじゃなくて、シェイクで」とボンドのようにオーダーできるようになりたいです。これをごく自然に言えるには、もっと人間を磨かなアキマヘン。
そんなことを考えていると、養命酒入りのマティーニが急に欲しくなってきた~!!

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。