もちろん野球映画も。
米大リーグ史上、欠かせない選手を主人公にした映画が今日から公開されます。
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ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグといった伝説的な米大リーガーの映画がこれまで何本も作られてきた。
その中で重要な人物が抜けていた。
黒人のジャッキー・ロビンソン。
彼の背番号「42」が大リーグで唯一、全球団共通の永久欠番になった理由を掘り下げる。
伝記物ではない。
黒人リーグからブルックリン・ドジャースでメジャーデビューした2年間(1945~47年)に的を絞った。
かつて大リーグに黒人選手が在籍していたそうだが、ロビンソンへの風当たりは強烈だった。
周りのプレーヤーは全て白人。
チームメートはもとより、ファン、他球団、マスメディアまでもが彼の出場をあからさまに嫌悪し、拒否する。
観客席から聞くに耐えがたい野次が飛び交い、脅迫状もどっさり届く。
そんな状況下、黙々と野球に没頭するロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)。
その真摯な姿は後年の公民権運動への布石となった。
映画はしかし、政治性を前面に押し出さない。
耐える勇気。
やり返さない勇気。
入団時、球団オーナーのリッキー(ハリソン・フォード)から放たれた箴言をいかに実践したか。
そこをつぶさに描き上げる。
気高い闘志が球場の内外に伝播し、硬直化した空気を徐々に和らげていく。
正直、胸が打たれた。
脚本も執筆したブライアン・ヘルゲランド監督の徹底取材と奇をてらわない演出が存分に生かされている。
ビジネスライクな面を覗かせながらも、終始、人道的な言動を貫くリッキーを美化しすぎた感がある。
とはいえ、妻レイチェル(ニコール・ベハーリー)や黒人記者スミス(アンドレ・ホランド)以上に、稀有な選手を支えた人物として計り知れない存在感を示した。
至近距離での撮影が際立つ試合のシーン。
野球映画の醍醐味はやはりそこにあると改めて実感した。
2時間8分
★★★★(見逃せない)
☆11月1日(金)大阪ステーションシネマ他全国ロードショー
(日本経済新聞2013年11月1日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)