『i -新聞記者ドキュメント-』
東京新聞社会部、望月衣塑子記者の取材活動を「密着取材」したドキュメンタリー映画です。
知りたいことを追い求め、納得できるまで引き下がらない彼女の姿勢には敬意を表しますが、ゆめゆめ〈ヒロイン〉ではありません。
一介の記者です。
それがこんなふうに焦点を当てられるというのは、やはり報道メディアが弱体化してきているからなのでしょう。
とりわけ、ジャーナリズムの根幹ともいえる「権力監視」において。
ぼくが現役記者のとき、取材先と「良好関係」を築いてネタを取るため、「提灯記事」を書いたりして忖度したこともありました。
望月記者が官邸記者会見で歯に衣着せぬ質問を投げかけられるのは、持ち場のない遊軍記者であることが大きな要因になっていると思います。
しかし、それを承知の上で本作を観ても、彼女のような気骨ある記者が年々、少なくなってきたなぁと外野席の人間でも感じています。
ぼくが担当している関大社会学部メディア専攻の講座「マス・コミュニケーション特論A」で、報道メディアを取り巻く現状を解説しながら、この映画を学生たちに紹介しました。
みな、思いの外、熱心に耳を傾けてくれたのがうれしかったです。
政府・政権のメディアへの介入、閉鎖的な記者クラブ……、いろんな問題があぶり出されています。
ドキュメンタリスト、森達也監督の妥協のない「取材」に拍手を送りたいです。
要は、何で今、こんな映画が撮られたんや~!?
そこを考えてもらいたいと思うてます。
大阪は16日から十三の第七藝術劇場とシアターセブンで。