意表を突くタイトルで話題になったベストセラー小説(著者・住野よる)の実写映画化。
単なるお涙頂戴モノに終わらせず、生きることを真正面から見据えた、芯のある青春映画に仕上がっている。
明朗快活な高校2年生の桜良(浜辺美波)はクラスの人気者だが、実は重い膵臓病を患っている。
読書好きの同級生の僕(北村匠海)がそのことを知るや、彼女が急接近する。
2人が図書委員というのがミソ。
原作とは異なり、12年後に母校の高校教師になった僕(小栗旬)が、取り壊される図書館で蔵書の整理中に高校時代を回想する。
過去と現在との交錯。
映画的にはこの方が向いている。
舞台となる図書館の佇まいが素晴らしい。
ヒロインを想起させる窓の外の桜花、その窓から降り注ぐ穏やかな陽光。
これが映画の淡いトーンを決めていた。
2人の距離感が非常に曖昧だ。
一緒に福岡まで旅に出かけるのに、恋人ではない。
かといって友達でもない。
そんな既成の感情では推し量れない〈絆〉が彼らを結びつけている。
日々、ひたむきに生きようとする桜良と、何とか彼女に寄り添おうとする僕。
物語の核心ともいうべきこの関係性を月川翔監督はあえてスケッチ風に軽やかに描いた。
それが功を奏したといえる。
2人は純粋で初々しい。
そこに切なさと儚さを加味させ、嫌味のないヒューマンドラマへと昇華させた。
ただ綺麗ごとが多い。
少し毒気を添えてほしかった。
成人になった桜良の親友、恭子(北川景子)がウエディングドレス姿で号泣するシーンは胸に染み入る。
この長回しはクライマックスとして見ごたえ十分。
大人からすれば、こんな青春譚は青臭く感じられ、観るのを躊躇しがち。
でも偏見を捨て、本作と向き合ってほしい。
何かビビッとくるはず。
1時間55分
★★★★(見逃せない)
☆TOHOシネマズ梅田ほかで公開中
(日本経済新聞夕刊に2017年7月28日に掲載。許可のない転載は禁じます)