観終わって元気がもらえるラブ・コメディー。
恋に悩める乙女心を軽快に、かつ勢いよく描き切った。
疾走感が心地良い。
女性の恋愛譚だが、男性でも十分、楽しめる愉快な映画だ。
原作は芥川賞作家、綿矢りさの同名小説。
それを大九明子監督がロックンロールのノリで大胆にアレンジした。
東京で一人暮らしをするヨシカ(松岡茉優)は24歳のOL。
ひねくれた夢想家で、絶滅した動物のマニアという変わり者だ。
そんな彼女の毒気たっぷりのモノローグが物語を引っ張る。
中学時代に心を惹かれた同級生の「イチ」(北村匠海)をずっと思い続けている。
イケメンで何となく陰りがあるところも彼女には魅力的に映るらしい。
そこに、「ニ」(渡辺大知)という会社の同期の営業マンから人生で初めて告白される。
この青年は調子が良くて、ひょうきん者。
人は良いのだが、正直、タイプではない。
さぁ、どちらを選ぶ?
前者は理想、後者は現実。
少女漫画によくありがちな内容を、女性のリアルな感情をめいっぱい盛り込んで1本の映画に集約させた。
全編、主人公が街中の人に語りかける会話劇風。
しかもミュージカルのごとく突然、歌い出すのだからおったまげる。
それらは全て彼女の心の声なのだ。
〈遊び心〉を添えたテンポの良さが本作の醍醐味。
大九監督は俳優を念頭に置いて脚本を執筆(当て書き)しただけに、キャラクターのブレが全くない。
映画初主演の松岡が体当たりでヒロインになり切っていた。
不器用ながらも、持ち前のパワーを全開させ、身勝手に歩んでいく姿が何にも増して面白い。
その独り相撲的な言動に最後まで引きずり込まれる。
でも決して嫌味を感じさせない。
こんなライト感覚の娯楽映画で今年を締め括るのも悪くはない。
1時間57分
★★★(見応えあり)
☆12/23(土・祝)、シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/T・ジョイ京都/シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー
日本経済新聞夕刊に2017年12月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)