武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

ラブ・コメも捨てたもんやおまへん~『勝手にふるえてろ』

投稿日:

観終わって元気がもらえるラブ・コメディー。

恋に悩める乙女心を軽快に、かつ勢いよく描き切った。

疾走感が心地良い。

女性の恋愛譚だが、男性でも十分、楽しめる愉快な映画だ。

©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

原作は芥川賞作家、綿矢りさの同名小説。

それを大九明子監督がロックンロールのノリで大胆にアレンジした。

東京で一人暮らしをするヨシカ(松岡茉優)は24歳のOL。

ひねくれた夢想家で、絶滅した動物のマニアという変わり者だ。

©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

そんな彼女の毒気たっぷりのモノローグが物語を引っ張る。

中学時代に心を惹かれた同級生の「イチ」(北村匠海)をずっと思い続けている。

イケメンで何となく陰りがあるところも彼女には魅力的に映るらしい。

©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

そこに、「ニ」(渡辺大知)という会社の同期の営業マンから人生で初めて告白される。

この青年は調子が良くて、ひょうきん者。

人は良いのだが、正直、タイプではない。

©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

さぁ、どちらを選ぶ?

前者は理想、後者は現実。

少女漫画によくありがちな内容を、女性のリアルな感情をめいっぱい盛り込んで1本の映画に集約させた。

全編、主人公が街中の人に語りかける会話劇風。

しかもミュージカルのごとく突然、歌い出すのだからおったまげる。

それらは全て彼女の心の声なのだ。

〈遊び心〉を添えたテンポの良さが本作の醍醐味。

大九監督は俳優を念頭に置いて脚本を執筆(当て書き)しただけに、キャラクターのブレが全くない。

映画初主演の松岡が体当たりでヒロインになり切っていた。

不器用ながらも、持ち前のパワーを全開させ、身勝手に歩んでいく姿が何にも増して面白い。

その独り相撲的な言動に最後まで引きずり込まれる。

でも決して嫌味を感じさせない。

こんなライト感覚の娯楽映画で今年を締め括るのも悪くはない。

1時間57分

★★★(見応えあり)

☆12/23(土・祝)、シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/T・ジョイ京都/シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー

日本経済新聞夕刊に2017年12月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

関連記事

なぜ戦わないのか!? 生きることを問う『永遠の0』

なぜ戦わないのか!? 生きることを問う『永遠の0』

(C)2013「永遠の0」製作委員会 日本経済新聞「映画万華鏡」で今年、最後に取り上げた作品です。 原作者の思想性がクローズアップされ、何かと物議をかもしているようですが、作家は作家、小説は小説、映画 …

『冒険者たち』~夢とロマン、そして青春へのオマージュ

『冒険者たち』~夢とロマン、そして青春へのオマージュ

好きな映画は山ほどあります。 でも、心が乾いてきたとき、無性に観たくなるのがこの作品です。 世界に誇れるフランス映画~!! こんなエッセーを書きました。      ☆     ☆     ☆      …

明日(27日)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ 古川昌希です』に出演します~(*^o^*)

明日(27日)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ 古川昌希です』に出演します~(*^o^*)

明日、27日(金)、久しぶりにABCラジオ『おはようパーソナリティ 古川昌希です』にゲスト出演します。 いつもながら、午前8時からの「話のダイジェスト」のコーナーで、フルポン、こと古川アナがスルーした …

舞台『フェイドアウト』のアンコール公演、無事に終了しました!

舞台『フェイドアウト』のアンコール公演、無事に終了しました!

舞台『フェイドアウト』アンコール公演、昨日、千秋楽を終えました。 5回のステージが、2月公演と同じくすべて完売でした❗ 酷暑の中、ご来場された皆さん、ホンマにありがとうございました&#x …

ドキュメンタリー映画『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

ドキュメンタリー映画『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』

「大勢の国民に選ばれたなら、国民と同じ暮らしをすべきです。特権層ではなくてね」 「大富豪のように800億ドル持ってたら? 騙されないように必死に警戒するでしょう。でも、所詮、それだけの人生」 人口34 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。