武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

山に魅せられた2人の男~日本映画『エヴェレスト 神々の山嶺』

投稿日:

世界最高峰エヴェレスト(8848㍍)を舞台に、山にとり憑かれたクライマーとその男に魅せられたカメラマンの動きを追う。

 

なぜ山に登るのか。

 

その答えをドラマチックに導き出す。

©2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

©2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

冒頭が面白い。

 

1924年、エヴェレスト登頂に挑み、山頂付近で遭難した英国の登山家ジョージ・マロリーが使っていたと思われるカメラがネパール・カトマンズの骨董店で売られていた。
そのカメラを介して、山岳撮影家の深町(岡田准一)と数年前に消息を絶った登山家、羽生(阿部寛)が邂逅する。

 

2人とも極めて個性が強い。

 

深町は特ダネを追う新聞記者さながら、何か金になる題材がないかと目をぎらつかせている。

 

そんなやさぐれ男に扮した岡田の演技が妙に新鮮に感じられた。
一方、羽生は「山をやらないなら死んだも同然」と公言する根っからの山男。

 

©2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

©2016「エヴェレスト 神々の山嶺」製作委員会

寡黙で人嫌い。

 

孤高の登山家になりきった阿部の仙人のような風貌が際立つ。
この男がどうしてネパールの片田舎に引きこもっているのか。

 

その理由を深町が探るうち、羽生のザイルパートナーだった亡き青年の妹(尾野真千子)やライバルの登山家(佐々木蔵之介)らが絡み、ドラマが凝縮していく。
クライマックスは羽生が冬季に南西壁単独無酸素登頂に挑戦するシーンだ。

 

標高5200㍍の地点で撮られた本物の映像に圧倒された。

 

作家、夢枕獏の原作小説ではここまで描き切れなかった。

 

まさに映画力。
日本人で最多、7回のエヴェレスト登頂記録を持つ映像カメラマン村口徳行があますことなく自然の脅威を映し出す。

 

同時にそれに対峙する人間の野望もレンズで捉えていた。
平山秀幸監督の演出は安定感があり、申し分なかったが、マロリーのカメラの顛末にもう少し光を当ててほしかった。

 

「男の顔」が絵になる山岳映画だった。

 

2時間2分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆12日からTOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー

 

(日本経済新聞夕刊に2016年3月11日に掲載。許可のない転載は禁じます)

 

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

洒脱なフランス映画~『ゲンズブールと女たち』

洒脱なフランス映画~『ゲンズブールと女たち』

©2010 ONE WORLD FILMS-STUDIO37-UNIVERSAL PICTURES INTERNATIONAL FRANCE – FRANCE 2 CINEMA …

『大阪「映画」事始め』、各メディアで続々、紹介されています~!

『大阪「映画」事始め』、各メディアで続々、紹介されています~!

またまた拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)に絡む投稿で申し訳ありません~(^^;)   ほんま、しつこいですねぇ~(笑)   今日の朝日新聞夕刊に本の紹介、大阪映画サークルの機関 …

「昭和」の残照……犯罪ミステリー『64-ロクヨン-前編/後編』

「昭和」の残照……犯罪ミステリー『64-ロクヨン-前編/後編』

作家、横山秀夫の推理小説を原作にしたテレビドラマの映画版。 「昭和」を引きずる男たちの苦悩を濃密にあぶり出し、一級の犯罪ミステリーに仕上げた。 銀幕を覆う重々しい空気感が映画としての風格を与えていた。 …

映画『万引き家族』のお母さん役、安藤サクラさんはどこまでも自然体でした~(^_-)-☆

映画『万引き家族』のお母さん役、安藤サクラさんはどこまでも自然体でした~(^_-)-☆

非常に気になる日本の女優……、安藤サクラさん。 カンヌ映画祭の最高賞パルムドール受賞作『万引き家族』でたくましくも、けったいなお母ちゃんを演じてはりました~😁 秋からスタートのNHK朝 …

14日の夜、新規オープンのブックカフェ「ワイルドバンチ」でこけら落としのトークイベントをやります~(^_-)-☆

14日の夜、新規オープンのブックカフェ「ワイルドバンチ」でこけら落としのトークイベントをやります~(^_-)-☆

大阪・天六(天神橋筋六丁目)にあるブックカフェ「ワイルドバンチ」。 古本屋とカフェバーがミックスしたユニークな空間で、映画本や映画ポスターが多く、映画ファンにはよく知られているところ。 その「ワイルド …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。