武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

フランス南西部紀行(2014年夏)

(10)フランス南西部紀行~パリ〈最終回〉

投稿日:

花の都、パリ。

 

ぼくは正直、夏の観光シーズンのパリは好きではありません。

 

ぼくも観光客なのですが(笑)、その中に紛れ込んでしまうのが大嫌いなんです。

 

へそ曲がりです~(^_-)-

 

だからルーブル博物館、エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼといった名所には足を運ぶ気になれず、穴場的なところに行くつもりでした。

 

それがギュスターブ・モロー美術館。

 

パリジャンのモロー(182698年)は象徴主義を代表する画家です。

 

画風は全く違いますが、アンリ・マティスやジョルジュ・ルオーの先生です。

 

古代ギリシア神話を題材にした幻想的な作品の数々。

 

ユニコーン(一角獣)が寄り添い、ヘラクレスが苦悶し、アポロンが雄たけびを上げる。

 

大学時代、この美術館で初めてモローの世界に接し、心底、惚れ込んでしまいました。

 

だから、38年ぶりの再訪です。

 

昔は古色蒼然とした幽霊屋敷のような印象を受けたのですが、リニューアルされたのか、妙にきれいになっていました。

 

パリの他の美術館とは違って入場者が少なく、落ち着いて鑑賞することができました。

 

 

館内撮影のOK

 

ありがたいです。

 

このあとメトロでパリ南東部の開発地区ベルシーへ。

 

シネマテーク・フランセーズ(映画博物館)を見学するためです。

 

かつてはエッフェル塔の近く、シャイヨー宮にありました。

 

そこで若かりしころのフランソワ・トリュフォー、ジャン・リュック=ゴダール、クロード・シャブロルらが日々、映画を観まくり、やがて「ヌーヴェル・ヴァーグ」として映画革新運動を起こしました。

 

フランス映画、いや世界の映画の「聖地」とも呼べるところです。

 

学生時代、パリに滞在中、ぼくは毎日、そこに入り浸っていました。

 

それが1997年に火災に遭って閉館。

 

2005年、ベルシー地区で甦りました。

 

展示内容が充実していると聞いていたので、必見スポットです。

 

ルンルン気分でシネマテークに来ると、あろうことか休館中。

 

ガーーン!!

 

9月2日まで夏休みとか。

 

そんあ、アホなことあるかい!

 

この時期、パリに来る観光客が一番多いのに。

 

案の定、次から次へと映画ファンが来て、みな失望していました。

 

腹が立ち、気分直しに近くのカフェでモヒートをオーダーしたら、信じられないくらいマズかった~((+_+))

 

10ユーロ(約1400円)もしたのに!!

 

これをもって旅の終わりにしてはアカン。

 

そう思って、北西部のサン・マルタン運河に向かいました。

 

この辺り、観光客が少なく、落ち着いたたたずまい。

 

市民の憩いの場になっています。

 

運河沿いにアイリッシュ・パブを見つけたので、ギネスで飲み直し(ハーフ・パイントですが)。

 

そして、念願の建物を発見しました。

 

HOTEL DU NORD(北ホテル)。

 

戦前、活躍したフランス映画界の巨匠マルセル・カルネ監督(190696年)の代表作『北ホテル』(1938年)の舞台になったところです。

 

滋味あふれる群像ドラマでした。

 

撮影はほとんどスタジオで行われましたが、それでも名作の地であるのは間違いありません。

 

今はホテルではありません。

 

カフェとレストランになっています。

 

でも、ぼくにとっては「北ホテル」なのです。

 

旅の最後に満足できるところに来られ、ほんま、よかったです。

 

ケルト、映画、お酒、歴史……。

 

ぼくの好きな世界をとことん追求した旅でした。

 

ワイン、ビール、それにパスティスをよく飲みました。

 

収穫大の旅。

 

これをもって、レポート終了です。

-フランス南西部紀行(2014年夏)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。