武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

事件の裏側をあぶり出す~アメリカ映画『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

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© 2013 Exclusive Media Entertainment, LLC

 

知らない事実がいっぱいあり、元新聞記者として、非常に興味深く観れました。

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

51年前の19631122日、日米間初のテレビ衛星中継でいきなり飛び込んできたビッグニュース、それがケネディ米大統領の暗殺だった。

 

これまでこの事件を扱った書物やドラマ、映画が数多く世に出たが、こんな斬り口で迫ったのは初めて。

 

真相を暴くのではなく、表舞台に現れなかった人物に焦点を当てた。

 

それも綿密な取材を基に事実を積み重ね、事件の周辺部分を子細に再現してみせた。

 

ドキュメンタリー映画さながらの緊迫した映像は圧巻だ。

 

本作で監督デビューしたピーター・ランデズマンは元ジャーナリスト。

 

プロデューサーを務めた俳優トム・ハンクスから原作本を手渡され、肉付けするために固く口を閉ざしていた関係者から証言を集めたという。

 

テキサス州ダラスで、オープンカーに乗ったケネディに3発の銃弾が浴びせられた。

 

その瞬間から一気に怒涛のごとく時間が動き出し、容赦なく人を巻き込んでいく。

 

衝撃の様子を8ミリカメラで撮影した服飾製造業者、大統領を警護していたシークレットサービスの主任、搬送先のパークランド病院の医療スタッフ……。

 

同病院での騒然たる状況には瞠目した。

 

大統領夫人をはじめ各人の言動、救命処置、張り詰めた空気をつぶさに拾い上げ、手持ちカメラで極めてリアルに描いた。

 

ディテールにこだわる姿勢は大いに評価したい。

 

実行犯とされるオズワルド以上に注目したのが彼の母親と兄だ。

 

突然、身に降りかかった人生の激変にどう対処したのか。

 

オズワルドと接点のあったFBI捜査官といい、事件の裏側に潜む濃厚な「人間ドラマ」に惹きつけられる。

 

ゆめゆめ娯楽作ではない。

 

ジャーナリスティックな視点で見据えた映画ゆえ、誇張がなく、淡々と展開する。

 

だからこそ余韻が深い。

 

1時間33分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆7月5日(土)より、テアトル梅田/シネマート心斎橋/シネ・リーブル神戸にて

 

(日本経済新聞2014年7月4日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。