武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

ワインが奏でる人生のまわり道~映画『サイドウェイズ』

投稿日:2009年10月31日 更新日:

早いもので、きょうで10月が終わります。ポカポカ陽気なので、正直、秋を感じにくいけれど、来週あたりから寒くなってくるようです。
秋の夜長、ワイングラスを傾けながら、あれこれと考えるのもなかなかいいもんです。
そんなわけで、ワインがキーポイントになる映画のエッセーをどうぞ。映画が続きますが、ご了承ください。
    *      *     *     *     *
サイドウェイズ①
(c)2009 Twentieth Century Fox and Fuji Television
「まっすぐ目的に到達するより、寄り道する人生もいいものだよ。予期せぬ出会いや体験があるから」
映画の中で出てきたセリフに心が揺さぶられた。というのは、ぼくが日ごろ思っていることだったから。タイトルの「サイドウェイズ(SIDEWAYS)」とは「寄り道」のこと。複数形になっているから、1本道ではなく、いろんな道を指す。あちこちの道を行ったり来たりする方が充実した人生を送れるかもしれませんよ~とこの映画は伝えていた。
何も人生訓を垂れる小難しい映画ではない。米西海岸カリフォルニアのワインの産地ナパ・バレーを舞台に、アラフォー(40歳前後の世代)の2組の男女が繰り広げる大人の“青春映画“だ。
何をやってもうまくいかず、ふさぎ込んでいる売れないシナリオ・ライター道雄(小日向文世)が、ロスのレストランで雇われ店長をしている親友、大介(生瀬勝久)の結婚式に出席するため渡米する。ロスは20年前、道雄が留学していた懐かしの地だ。
2人はドライブしながらワインナリーを巡り、独身時代最後の1週間をワイン三昧で過ごす。その過程で、道雄は留学中に家庭教師をしていた時の教え子、麻有子(鈴木京香)と出会い、恋情を抱く。
彼女は離婚後、ワインナリーに勤め、ワインの道で生きていこうと懸命だった。見るからにキャリア・ウーマン。道雄はワイン・オタクで、1年前、同棲していた女性に逃げられていた。2人の波長は絶対に合うはずだったが、なかなか距離感が狭まらない。
一方、大介はあろうことか、婚約者の身であることをひた隠し、麻有子の友人で画家をめざすアメリカ育ちのミナ(菊地凛子)と意気投合。結婚を取り止めて、彼女と暮らしたいと思い始める。
この大介が実にちゃらんぽらんな男。行き当たりばったりで、欲望のまま行動する。彼の無軌道な楽天家ぶりが強烈な印象を与え、ちょっぴり毒気のあるスパイスになっていた。生瀬の突き抜けた演技が秀逸だ。
道雄がそんな大介と一緒にいると、何とまぁ、不器用な男だと思ってしまう。もっと要領よく生きて、シャキッとせんかいとイライラしてくるが、それが彼の人間性なのだからどうにも仕方がない。ほんと、寄り道ばかりしている、そんな生き方なのだ。
米映画『サイドウェイ』(2004年)のリメークだが、チェリン・グラック監督が日本バージョンとしてそつなくまとめていた。カリフォルニアの名醸ワインがわんさと登場する。ワインの知識をほんの少し持っておれば、映画をさらに楽しめるだろう。何しろ人生をワインに例えていたのだから~。
☆10月31日から全国ロードショー
                         (「うずみ火」2009年10月号)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。