武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

お酒 エッセー

「大阪のだし」……、ぼくのエッセーが大阪府のメルマガに載りました!

投稿日:2012年11月1日 更新日:

 

 大阪府のメルマガ「大阪ミュージアム」連載コラム『大阪のだし』に今日、ぼくの拙稿が載りました。

 

だしに対する熱い想いを語っています。

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

だしとお酒、飲みダシたらやめられへん!?

 

人生で得したなぁとつくづく思うこと。

 

それはお酒を嗜むことができたこと。

 

ゆめゆめぼくは酒豪ではないけれど、アルコールのプラス面によって会話力・コミュニケーション力が高まり、多くのオモロイ、けったいな人たちと出会えました。

 

それが大きな財産になっています。

 

同時に、食べ物の嗜好が格段に広がったのがうれしくてなりません。

 

要は酒の当て(肴)で、おかずのバリエーションが増えたというわけです。

 

高野豆腐、大根(切り干し大根も!)、お揚げさん(厚揚げ)、かしわ(鶏肉)、おじゃが(ジャガイモ)、ヒジキの炊いたモン……。

 

南京(カボチャ)だけはどうにも苦手だけれど、こうした煮物を口にしたのは、恥ずかしながら、お酒を飲み始めてからでした。

 

なんせ好き嫌いが激しかったもので。

 

そして酒の味がそこそこわかるようになった30代半ばになって、こんな確信を抱いたんです。

 

ひょっとしたら煮物はお酒のために存在する料理ではないかと。

 

ほんまによぉ合いますからね。

 

ここで言う酒とは、ビールや焼酎などなんでも含みますが、やはり日本酒です。

 

和食には日本酒。

 

これ、不変の定理ですね。

 

人肌燗の純米酒と煮物との相性は絶品ですなぁ。

 

夏場でもこの取り合わせは崩しにくい。

 

とりわけ、だしがシュン(浸ん)だかしわとほんのりと温かさをかもし出す酒が口の中で出会ったときの悦びはビヨンド・デスクリプション、形容しがたいです!

 

と言いながら、昨今、煮物にビールもなかなかいけると手ごたえを感じています。

 

麦とだしが見事にコラボするんです。

 

ホップの利いたビールならなおさらです。

 

ウイスキーの水割りもええ塩梅です。

 

それに冬は芋焼酎のお湯割りで煮物をいただくことも多い。

 

なんやかんや言うて、結局は「酒好き」なんや。

 

でも「酒呑み」でないところがニクイ(!?)。

 

この違い、わかりますか。

 

前者はちょっとこだわってお酒を味わう。後者は酔うために飲む。

 

アルコールならなんでもいい、そんな感じです。

 

閑話休題--。

 

そのうち、煮物の決め手となるだしを意識し始めました。

 

東京に出張すると、大阪のだしが恋しくて、恋しくて。

 

ともすれば直線的な向こうの味にくらべ、なんとまぁ、まったりしていることか。

 

換言すれば、奥が深いとでも申しましょうか。

 

いや、心がとろけてしまいそうになるんですよ。

 

ちょっと大げさかな!

 

ぼくは決してグルメではありません。

 

だから舌が肥えているわけではないんですが、それでもだしの味の違いくらいは判別できます。

 

今では東京の煮物、うどんやそばのだしは無条件に、あるいは生理的に拒否反応を示してしまう。

 

第一、底の見えないあの濃い色からして引いてしまいます。

 

不気味です。

 

だしは透き通ってないとあきまへん。

 

で、大阪のだし、昆布が味の要になってことを知り、得心がいきました。

 

鰹節との相乗効果ですね。

 

なんでこんなええうま味が出るのか、だれか賢い人、科学的にわかりやすく説明してください。

 

ともあれ、大阪人に生まれてよかったと心底、思うてます。

 

昆布を使っていないだしなんて、蛸の入っていないたこ焼きと同じ。

 

ここまで言い切るのは極端かな。

 

関東煮(かんとだき)を食べているとき、鍋の底に潜んでいる昆布を目にすると、心がときめきます。

 

これもちょっと大げさかな!?

 

それこそだしがそのまま活かされるだし巻き卵は、ぼくの大好物です。

居酒屋に行けば、必ず注文します。

 

もちろん日本酒がベターですが、ビールの当てにもピッタリ。

 

まず口に入れてじっくり味を堪能する。ほろ甘さが充満してきたとき、無性にビールを飲みたくなるけれど、そこは我慢の子、卵をきちんと食べてから、ビールを口に含む。

 

だしの余韻とビールの炭酸が絶妙に絡み合い、さぁ、つぎのひと切れをいただこうという具合になります。

 

最後にお酒を飲んだあとのうどん。

これがめっぽう美味い。

 

若いときはラーメンで締めていましたが、50歳を超えてからは、うどんが定番になりました。

 

麺のでんぷん質で腹を満たすのが目的とはいえ、ぼくはだしのうま味を体感する方に重きを置いています。

 

ほろ酔い気分でだしをすすったときの安堵感。

 

ほんま、たまりまへん。

 

この気持ち、わかる人が多いと思いますが。

 

最近、うどんのだしの善し悪しがわかるようになってきましてね。

 

だだっ辛いだしなんて論外。

 

それこそダメ出しですわ。

 

昆布と鰹節をマッチングさせた柔らかい風味のだし。

 

そうでないと胃袋に入ったお酒が悲鳴を上げてしまいます。

 

満足できるだしなら、なんぼ腹いっぱいでも、飲み干すことができます。

 

不思議なもんですなぁ。

 

これ、「だし腹」ちゅうんです(ぼくの造語!)。

 

小さいころ、「うどんのだしは全部、飲み干すもんや」と祖母から教え込まれてきたことも多分にあるとは思のですが、美味いからこそ残したくない。

 

正論でしょ?

 

さぁ、今宵もだしとお酒のマリアージュを満喫してこよっと!

-お酒, エッセー

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。