昨夜、大阪・十三の劇場「シアターセブン」で、ドキュメンタリー映画『教育と愛国』を試写で観ました。
教科書をはじめ教育のさまざまな現場に政治がどんどん介入している、そんな由々しき現状が浮き彫りにされていました。
2017年に放送された映像を映画化したもので、監督はMBS(毎日放送)報道情報部の斉加尚代さん、プロデューサーは彼女の先輩、澤田隆三さん。
お2人ともよく知っています。
教科書の記述において、「従軍慰安婦⇒慰安婦」「強制連行⇒徴用・動員」といったように政府見解に沿った形で、先の戦争で日本が行った「加害」の部分に修正を求められていることがよくわかりました。
奇しくも、ぼくがこの映画を観た昨日、文部科学省がこうした修正を反映させた高校教科書の検定結果を発表していました。
政府見解に基づかないと、つまり「忖度」しないと、検定に合格しない。
合格しなければ、教科書を出している出版社が窮地に陥ってしまう。
何か脅しみたいですね。
国にとって都合の悪い歴史的事実を歪め、それを子どもたちに教えるというのは言語道断だと思います。
「負の歴史」にフタをし、認めないという姿勢は全くノー・グッド、アウトです~!
こうした流れが続くと、日本はどこぞの国のような独裁国家になってしまいます。
この映画を観て、改めて恐ろしいなぁと感じたのは、国の意向に反対する意見や主張を発言すれば、すぐに「反日」「非愛国」のレッテルが貼られ、バッシングを受けることです。
安倍元首相がそれを率先していましたね。
だんだん、モノが言えなくなってきています……、怖い、怖い。
ふと思ったのは、先ほど、どこぞの独裁国家と言った、ウクライナに軍事侵略しているロシアのことです。
独裁者プーチンを批判し、「反戦」と叫んだ人は、みな「反ロ」とみなされ、逮捕されています。
先日、ロシア国営テレビのニュース番組で、「反戦」を訴えた紙を持ってスタジオに現れた放送局の女性スタッフがいましたよね。
非常に勇気ある行動に出た彼女は、紛れもなく愛国者です。
「亡命するのなら受け入れる」というフランス政府の申し出を断り、国内に留まった理由は、「祖国ロシアが好きだから」でした。
プーチン政権からすれば、あの女性は「反ロ」的人物に他ならないでしょうが、本当にロシアのことを考えているのは、プーチンよりも彼女の方だと思います。
古い話ですが、戦後のアメリカで巻き起こった「赤狩り」の時代、政府を批判しただけで、「反米の共産主義者」と呼ばれ、弾圧を受けていました。
映画で反戦を訴えた、あの喜劇王チャップリンもその犠牲になりましたね。
いや、戦前と戦時中の日本もそうでした。
軍国主義化を賛美する国策に異を唱えた人は、みな「売国奴」として断罪されました。
翻って今の日本--。
学校で従軍慰安婦や朝鮮人の強制労働のことを取り上げる教師や、それらを研究する大学の学者に対し、「反日」「非愛国」的として誹謗中傷する風潮が強くなってきました。
これは非常に危険な兆候だと思います。
戦争を始めたプーチンを支持するロシア国民が多いのは、自国が国際的に四面楚歌になっている現状を知らず、ウソで塗り固められた国家のプロパガンダを信じているからでしょう。
学校教育の場でもそれが推し進められ、子どもたちが「洗脳」されています。
日本はかつてそういうことを体験し、ひどい目に遭っているのに、なぜ時代に逆行するような動きが加速化しているのでしょうか。
一刻も早く止めないといけません。
こうした権力の動きを監視するのが、政権に忖度しない、毅然としたジャーナリズムです。
だから、この映画を撮ったMBSの報道マンは真の意味で、ジャーナリストだと思うのです。
映画の「スペシャルサンクス」にクレジットされている、知人のジャーナリスト、木村元彦さんはこう言うてはります。
「右とか左とかではなく、普遍的な真実でなければならないものが権力で歪められているというのは、もはや独裁です。学んだ子どもたちに大人として責任を感じます。この映画は成功させねばなりません」
ぼくも強くそう願っています!
本作は5月13日から順次、全国で公開されます。