今朝はちょっと二日酔い気味。
昨夜のヌーヴォー・ワインとバーでのウイスキーが脳細胞にいたずらしたようです。
でも大学の授業では、相変わらずベラベラと喋りまくり、一気に回復できました。
ぼくの二日酔い避けは、喋ることだと改めて実感した次第。
で、授業の最後に話したのがこの映画のことでした。
福島原発事故でいろんな影響が出始めているだけに、観ておく方がいい作品だと思います。
今日の日経新聞夕刊に載った拙稿です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カリーナプロジェクト©
チェルノブイリ原発事故から25年。
依然、収束していない厳しい現実を、1人の少女を通して浮き彫りにする。
どこまでも純朴な眼差しで悲劇を見据えた家族ドラマ。
東京電力福島第一原発事故を引きずる私たちには重くのしかかる。
あの事故は自国ウクライナだけでなく、周辺諸国にも多大な影響を与えた。
映画の舞台となったベラルーシもその1つ。
チェルノブイリは国境近くにある。
カリーナプロジェクト©
少女カリーナが生まれ育ったのは、リンゴが実り、美しい川が流れるのどかな田舎の村。
彼女には楽園に思えたが、そこは居住禁止区域のすぐ傍にある。
村人はみな他所へ移住し、今や祖母しか住んでいない。
カリーナは首都ミンスクの親戚宅に預けられている。
父親は出稼ぎ、母親は発病して入院中だから。
カリーナプロジェクト©
少女にはその家は居心地が悪く、心は生家と優しい祖母に向いている。
家族離散の哀しさが物語の軸となる。
そんな設定の中で、カメラはあどけない主人公の姿を追う。
田舎の映像だけを見ると、メルヘンのような佇まい。
だからこそ、「チェルノブイリには悪魔のお城があり、毒をまき散らしている」という母親の言葉が胸に突き刺さる。
全世界的な問題としてチェルノブイリ原発事故を風化させてはならない。
強い使命感を抱いた今関あきよし監督が現地に飛び、2004年に本作を完成させた。
撮影の途中、主人公のモデルとなった少女が血液ガンで病死したという。
今年、ようやく公開にこぎつけた直後、東日本大震災が発生。
「今こそ見てもらいたい」と監督は訴える。
放射能の恐怖をいたずらにあおらず、また教条的にも説いていない。
淡々と事実を再現しているだけ。
監督の視線はカリーナの笑顔の向こうにある。
そこに熱い問いかけが感じられた。
1時間51分
★★★
☆19日(土)から大阪・梅田ガーデンシネマで公開
(日本経済新聞2011年11月18日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
原発の悲劇を淡々と描いた『カリーナの林檎~チェルノブイリの森』
投稿日:2011年11月18日 更新日:
執筆者:admin