武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

スタイリッシュな少女の殺し屋~『ハンナ』

投稿日:2011年8月30日 更新日:

残暑厳しい中、クールなヒロインを映画館で見て、暑気払いしませんか。
ハンナ
殺人マシーンと化した16歳の少女が銀幕を駆け抜ける。
こんな表現がぴったしの娯楽アクション。
『ニキータ』(1990年)や『レオン』(94年)のヒロインとはまた違った凄みのある少女だが、時折、覗かせるあどけなさに魅せられた。
主演はシアーシャ・ローナン。
英国映画界の俊英ジョー・ライト監督の代表作『つぐない』(2007年)でキーパソンを演じた彼女が、本作でハンナ役に抜擢され、同監督と再びコンビを組んだ。
まさに適役だった。
雪深いフィンランドの奥地でハンナは父親エリック(エリック・バナ)に育てられた。
外界から隔絶された2人だけの空間。
自給自足の厳しい暮らしの中で、格闘技術や銃剣の扱い方、語学などを教わる。
そんな少女が社会に飛び出た瞬間、命を狙われる。
憧れていた世界がとてつもなく残酷という設定。
情操教育として父親から与えられたグリム童話が伏線となっており、それが全編の流れを決めている。
ハンナを追い詰めるのがCIAの女性捜査官マリッサ(ケイト・ブランシェット)。
冷酷非情、そこに偏執的な性格が加わり、どう見ても魔女である。
ブランシェットはよく似た役どころが多く、何だか楽しんで演じているような感じ。
なぜ少女が襲われるのか。
その理由が彼女の出生と深く関わっている。
この謎解きが次第に浮き彫りにされるが、もう少しベールに包み込んでほしかった。
殺す動機も弱い気がする。
ハンナはベルリンを目指す。
その過程で驚異的な身体能力を発揮。
顔色ひとつ変えず、粛々と敵を打ち倒す姿が見どころだ。
理屈抜きに強い。
しかし旅行中の英国人家族との出会いで、10代の女の子であることを自覚する。
揺れ動く心理。
そこが一抹の清涼剤として利いていた。
1時間51分
★★★
☆全国で公開中
(日本経済新聞2011年8月26日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

初めての小説『フェイドアウト 日本に映画を持ち込んだ男、荒木和一』、今月末に発売です~(^_-)-☆

初めての小説『フェイドアウト 日本に映画を持ち込んだ男、荒木和一』、今月末に発売です~(^_-)-☆

以前、少しお知らせしましたが……。 ぼくの初小説『フェイドアウト 日本に映画を持ち込んだ男、荒木和一』が今月末に発売されます。 23冊目の著作で、67歳にして小説家デビューです~😁(笑 …

あの時代が甦る~ドキュメンタリー映画『ジョン・レノン、ニューヨーク』

あの時代が甦る~ドキュメンタリー映画『ジョン・レノン、ニューヨーク』

このギター、これまで何度もブログに出てきましたね。 ギブソンの「J-160E」。 エレクトリック・アコースティック・ギター(エレアコ)です。 昨年暮れ、縁合って、ぼくの最愛の宝物になりました。 ジョン …

12月1日(月)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ 道上洋三です』にゲスト出演します~(^_-)-☆

12月1日(月)、ABCラジオ『おはようパーソナリティ 道上洋三です』にゲスト出演します~(^_-)-☆

ABCラジオの朝の情報バラエティー番組『おはようパーソナリティ 道上洋三です』(am6:30~9:00)にゲスト出演します。   12月1日(月)のam8:00~30分ほどです。 &nbsp …

新人監督、広瀬奈々子のデビュー作『夜明け』

新人監督、広瀬奈々子のデビュー作『夜明け』

サスペンス風に不穏な空気を放ちながら人間を凝視する。 それも対象は弱者。 シンプルな物語の中に生きる本質をほのかに浮かび上がらせた秀作が生まれた。 ©2019「夜明け」製作委員会 監督は自身のオリジナ …

忘れ得ぬラストシーン~ときめきシネマ・ワールド(12月8日)

忘れ得ぬラストシーン~ときめきシネマ・ワールド(12月8日)

映画の締めとなるラストシーン。   名作といわれる映画は、どれもラストシーンにこだわりを見せています。   極めつけといえば、『第三の男』(1949年)。 ウィーンの中央墓地でカメ …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。