武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

家族の物語『TheLady アウンサンスーチ ひき裂かれた愛』

投稿日:2012年7月21日 更新日:

この映画、感動しました。

 

きょうから公開です。

 

オススメ!!

 

    ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

© 2011 EuropaCorp – Left Bank Pictures – France 2 Cinéma

ミャンマー(ビルマ)民主化運動の指導者アウンサンスーチー氏が24年ぶりに出国。記憶に新しいこの出国。」

 

この出来事の後に本作が公開されるとは、まさにタイムリー。

 

政治ドラマを越え、彼女を支えた家族の物語として紡ぎ上げた。

 

大学教授の英国人の夫マイケル、2人の息子と英国で幸せに暮らしていたスーチー氏が1988年、病気の母親を介護するため母国に戻った。

 

その瞬間、彼女の運命が変わった。

 

建国の父アウンサン将軍の娘の帰国が、軍政への不満を抱く国民を熱狂させた。

 

戸惑いを隠せなかった彼女だが、愛国心と使命感に突き動かされ、反政府運動にのめり込んでいく。

 

スーチー氏を取り巻く状況はよく報道された。

 

映画はしかし、プライベートな面に光を当てる。

 

通算15年間も自宅軟禁に置かれ、英国の家族と離散状態になった過酷な事実。

 

そこを容赦なくあぶり出すのだ。

 

夫の涙ぐましい奔走ぶりに胸が揺さぶられた。

 

ミャンマーの抑圧的な社会を世界にアピールし、妻を解放せんがためにノーベル平和賞を取らせようとする。

 

すごい献身愛。

 

その気概が彼女の活力源となった。

 

中国系マレーシア人ミシェル・ヨーがスーチー氏になりきり、彼女の勇気、強さ、苦悶を体の芯から表現する。

 

マイケル役のデヴィッド・シューリスの抑制の効いた演技も白眉だ。

 

監督は仏アクション映画の名うてリュック・ベッソン。

 

この手の映画を撮るとは意外だが、脚本を読んで号泣し、演出を引き受けたという。

 

それだけに熱情あふれる映像を生み出した。

 

現役の政治家を真正面から取り上げた映画は、ドキュメンタリー以外ではまずない。

 

変に描くと薄っぺらな英雄像ができ上がる。

 

本作ではスーチー氏の妻と母親の面をきちんと抑えたからこそ、彼女の素顔に肉迫できた。

 

2時間13分

 

★★★★

 

☆21日から大阪・梅田ブルク7ほか全国ロードショー

 

(日本経済新聞2012年7月20日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。