この映画、感動しました。
きょうから公開です。
オススメ!!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミャンマー(ビルマ)民主化運動の指導者アウンサンスーチー氏が24年ぶりに出国。記憶に新しいこの出国。」
この出来事の後に本作が公開されるとは、まさにタイムリー。
政治ドラマを越え、彼女を支えた家族の物語として紡ぎ上げた。
大学教授の英国人の夫マイケル、2人の息子と英国で幸せに暮らしていたスーチー氏が1988年、病気の母親を介護するため母国に戻った。
その瞬間、彼女の運命が変わった。
建国の父アウンサン将軍の娘の帰国が、軍政への不満を抱く国民を熱狂させた。
戸惑いを隠せなかった彼女だが、愛国心と使命感に突き動かされ、反政府運動にのめり込んでいく。
スーチー氏を取り巻く状況はよく報道された。
映画はしかし、プライベートな面に光を当てる。
通算15年間も自宅軟禁に置かれ、英国の家族と離散状態になった過酷な事実。
そこを容赦なくあぶり出すのだ。
夫の涙ぐましい奔走ぶりに胸が揺さぶられた。
ミャンマーの抑圧的な社会を世界にアピールし、妻を解放せんがためにノーベル平和賞を取らせようとする。
すごい献身愛。
その気概が彼女の活力源となった。
中国系マレーシア人ミシェル・ヨーがスーチー氏になりきり、彼女の勇気、強さ、苦悶を体の芯から表現する。
マイケル役のデヴィッド・シューリスの抑制の効いた演技も白眉だ。
監督は仏アクション映画の名うてリュック・ベッソン。
この手の映画を撮るとは意外だが、脚本を読んで号泣し、演出を引き受けたという。
それだけに熱情あふれる映像を生み出した。
現役の政治家を真正面から取り上げた映画は、ドキュメンタリー以外ではまずない。
変に描くと薄っぺらな英雄像ができ上がる。
本作ではスーチー氏の妻と母親の面をきちんと抑えたからこそ、彼女の素顔に肉迫できた。
2時間13分
★★★★
☆21日から大阪・梅田ブルク7ほか全国ロードショー
(日本経済新聞2012年7月20日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)