武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

ケン・ローチ監督の素敵なプレゼント、『エリックを探して』~♪

投稿日:2011年1月10日 更新日:

エリック
©Canto Bros. Productions, Sixteen Films Ltd, Why Not Productions SA, Wild Bunch SA, Channel Four Television Corporation,France 2 Cinema, BIM Distribuzione, Les Films du Fleuve, RTBF (Television belge), Tornasol Films MMIX
今年最初の映画のエッセーです。
このイギリス映画は超オススメ。
元気がもらえます~!!
    ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
人生って素晴らしい。
友情っていいものだ。
素直にそう思える映画だった。
社会派で知られる英国の名匠ケン・ローチ監督が従来の重々しい作風を覆し、心温まるヒューマン・コメディーに仕上げた。
希望に満ちあふれ、まさに新春にふさわしい人間ドラマだ。
まず驚かされたのは、サッカー界のスター、エリック・カントナが本人役で出演していること。
90年代前半、マンチェスター・ユナイテッドFCを復活させた立役者が本作を企画し、製作総指揮にも名を連ねている。
彼はしかし、主演ではない。
もう1人のエリック(スティーヴ・エヴェッツ)のサポート役に徹する。
主人公はマンチェスターの郵便局で働くしがない中年男。
結婚に失敗し、今では2番目の妻の連れ子と一緒に暮らしている。
反抗的で自堕落な生活を送る2人の義理の息子は父親の忠言なんぞに耳を貸さない。
典型的な家庭崩壊。
袋小路に陥ったエリックが自室でカントナのポスターに本音をぶつけると、突然、本人が姿を現す。
えっと意表を突く展開。
普通ならここでファンタジーになるが、決して日常性を崩さず、ドキュメンタリー風の映像で最後まで貫き通すところがローチ監督らしい。
カントナは事あるごとに出現し、格言じみた言葉を投げかけ、エリックを勇気づける。
何だか孔子みたいに見える。
その助言に従い、彼は30年前、大恋愛の末に結ばれた最初の妻リリー(ステファニー・ビショップ)とヨリを戻していくが、息子たちが悪の世界に染まっているのを知り……。
郵便局の仲間と共にギャングを急襲するシーンが最高に面白い。
チームワークの勝利。
1人では何もできない。
「全ては美しいパスから始まる」
冒頭のカントナの文言が言いようもなくハッピーな気持ちにさせる。
1時間57分。
★★★★
(日本経済新聞2011年1月7日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
☆関西ではテアトル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマで公開中

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プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。