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ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

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生誕100年 木下惠介監督全作品上映~!!!

投稿日:2012年7月14日 更新日:

黒澤明監督と並び称される日本映画界の巨匠、木下惠介監督(1912~1998年)。

 

生誕100年を記念し、21日~9月7日、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで全作品49本が一挙上映されます。

 

こんな企画は前代未聞です。

 

『陸軍』(44年)、『破戒』(48年)、『日本の悲劇』(53年)、『二十四の瞳』(54年)、『喜びも悲しみも幾歳月』(57年)、『楢山節考』(58年)、『笛吹川』(60年)、『なつかしき笛や太鼓』(67年)……。

 

おっと忘れていた。

 

日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』(51年)もありました。

 

東宝の黒澤明、松竹の木下恵介。

 

1950年代、2人が日本映画の黄金期に君臨し、名作を次々世に放っていきました。

 

64年に木下監督は松竹を去り、自らプロダクションを設立し、勢いづいてきたテレビの世界に飛び込みました。

 

すぐさま、テレビドラマ『木下恵介劇場』(TBS)がスタート。

 

のちに『木下恵介アワー』、『人間の歌』シリーズとして継がれていく。

 

そのなかでも、栗原小巻さんが主演した全26話の『3人家族』(68年)や『二人の世界』(70年)は視聴率が30%を超える“お化け番組”でした。

 

黒澤監督は依然、映画界に居続け、ダイナミックでかつ骨のある作品を製作していき、やがて「世界のクロサワ」の異名をとるようになりました。

 

一方、艶やかで情感あふれる演出が信条の木下監督はテレビに活動の場を移したこともあり、黒澤監督ほど高い評価を受けることはありませんでした。

 

でも、『二十四の瞳』なんて、第一級の反戦映画として世界でも十分、通用する作品だと思っています。

 

日本映画界において木下監督の存在は計り知れません。

 

その意味で、今回の全作品上映は非常に意義のあることです。

 

で、きょう(14日)、プレイベントとして「木下惠介監督全作品上映」開催記念の特別上映会が大阪・法円坂の大阪歴史博物館の講堂で開かれました。

 

木下監督自らメガホンを取った『3人家族』の1話と2話の上映後、栗原小巻さんのトークショー。

 

続いて、別室で囲み取材があり、ぼくもお邪魔しました。

 

栗原さんは思いのほか長身でした。

 

舞台俳優とあって、澄み切っているような声で木下作品に出演した思い出を話してくれました。

 

「テレビのドラマなのに、撮影は映画と同じように大掛かりでした。私と竹脇さん(共演の竹脇無我)が道路を隔てて歩くシーンは、実際に交通を遮断して撮っていました。テレビドラマでは考えられません」

 

「家のセットで用意されたソファを監督が気に入らなかったんです。自分のお気に入りのソファが見つかるまで、撮影が中止されたこともありましたねぇ」

 

「雲の動きが気に入らないと言って、午後から映画やドラマの話をしていたことも……。随分、贅沢な撮影現場でした」

「木下組は、ワンシーンをワンカットで撮ることが多いんです。山田太一さんの本(脚本)はワンシーンが長くて、かなり緊張感がありました。現場は和気藹々としていたのですがね」

 

「監督は、本当に心情を細やかに撮ってくださいました。松竹を辞められたときに、私が映画の世界に入りました。もっと監督の作品に出たかったです」

 

「木下監督のテレビドラマは私の青春そのものでした。山田太一さんの脚本もよかった。会話が楽しく、どのセリフも大好きでした」

 

「時代とは関係なく、普遍性があります。それが木下監督の作品です。全作品上映されるとは素晴らしい。正義、ヒューマニズム、人間愛。ぜひ監督の世界観を感じ取ってもらいたいです」

 

最後に、木下監督の言葉をどうぞ。

 

「人間が生きていくということは、本当に苦労が多いし、悲しいことも多い。人間は、まったくいじらしい生き物だとおもいます。

 

だからこそ、私は、すべての人にどうにかして幸せになってほしいと思いますし、そういう気持ちで映画を作り続けているんです」

 

☆松竹では木下惠介生誕100年プロジェクトを実施中です。

 

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。