武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

映画『ボックス!』~ボクシングに打ち込む大阪の高校生を熱写~!

投稿日:2010年5月22日 更新日:

ボックス!
      (C)2010 BOX! Production Committee
ボクシングに打ち込む高校生の青春映画。
舞台は大阪の下町。
それだけで熱く感じてしまうが、市原隼人を主演に起用したことで、さらにヒートアップした。
同じ高校に通うカブ(市原)とユウキ(高良健吾)は幼なじみ。
天性のボクシングセンスを持つカブは豪放磊落な性格で、クラブの練習にもあまり身を入れない。
一方、気弱なユウキは強くなりたい一心でボクシング部に入り、日々、鍛錬を積み、じわじわと実力をつける。
やがて2人はリングで激突!
不良じみた生徒と生真面目な優等生。
あまりにも対照的な人物設定が、通俗な青春ドラマといった空気をはらませる。
しかしそれを承知の上で観ても、友情とライバル心の狭間で揺れ動く若者の姿が迫ってきて、なかなか楽しめる。
彼らに立ちはだかる超高校級のボクサー稲村(諏訪雅士)やカブに恋情を抱くマネジャー丸野(谷村美月)らのキャラクターも非常にわかりやすい。
余計な部分を削ぎ落とし、人物の特徴を誇張するのが李闘士男監督の持ち味なのだろう。
沖縄の物語「てぃだかんかん」でもそうだった。
全編、大阪色が濃厚だ。空堀や十三の商店街、天王寺動物園、今宮戎神社……。お馴染みの場所が次々と映し出される。
カブの実家のお好み焼き店の常連客なんてステレオタイプな大阪人。
生粋の浪花っ子のぼくにはどうにも鼻についた。
監督が大阪出身とはいえ、いやだからこそもう少し抑えて描いてほしかった。
市原の熱演には圧倒される。
猪突猛進なカブにはエネルギッシュな彼が適役だと思うが、アクセルを踏みすぎた。
過剰演技を観続けるのはしんどい。
とはいえ、1ラウンド(2分間)を丸々ワンカットで撮ったファイティングシーンは気迫がみなぎり、見応え十分だった。
★★★(見応えあり)
☆東宝シネマズ梅田ほかで公開中
(日本経済新聞2010年5月21日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。