武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

時代劇『必死剣 鳥刺し』~妥協を許さない男の生きざま

投稿日:2010年7月11日 更新日:

参院選の投票日、開票結果が楽しみです。
明日からスコットランドへ行ってきます~♪
ライフワークの「ケルト」を探る旅です。
帰国する8月3日まで、ブログはお休みします。
パソコンを持っていけばいいんですが、かさばるし、おそらく取材で歩き回ってクタクタになっており、夜はスコッチ・ウイスキー漬けになっている可能性が大なので、ブログを書ける状態ではなくなっているにちがいありませんから。
いつも通り、「浦島太郎」状態になります(行方不明です)。
帰ってから、旅のハイライトを随時、ご報告します。
本にまとめるつもりですが……。
で、ブログの長期休載の前に、ぼくの大好きな作家、藤沢周平の原作を映画化した時代劇『必死剣 鳥刺し』の原稿を載せます。
昔の日本人は、ほんまシャンとしていましたわ。
帰国したとき、阪神タイガースが「首位」をキープしていることを願って、涼しいスコットランドへ旅立ちます~!!
    *     *     *     *     *     *
必死剣鳥刺し
         (C)2010「必死剣鳥刺し」製作委員会
藤沢周平の世界を思い切ってドライに映画化。
必勝の剣を繰り出す主人公の執念がズシリと胸に迫る。
妥協を許さない生き方が骨太な時代劇を生んだ。
東北の小藩が舞台。城内で開かれた能鑑賞のあと、藩主の妾、連子(関めぐみ)を藩士の三左ェ門(豊川悦司)がいきなり刺殺する。
幽玄な空気が宿る中での惨劇は、物語を引きつけるに十分なほど衝撃的である。
斬首が当然と思われながら、なぜか生かされ、1年間の幽閉のあと城内勤務となる。
殺害理由が、この武士のプロフィールとともに、静謐な映像で綴られる。
その佇まいが何とも悠然としている。
最初はじれったく感じたが、いつしか映画のペースにはまっていた。
妻を亡くした傷心から死を覚悟して臨んだ行為だったのに、死ぬことを許されない。
苦悶する三左ェ門を甲斐甲斐しく世話をし、恋慕を募らす妻の姪、里尾(池脇千鶴)のいじらしさが彼に生を呼び戻す。
一途な愛ゆえちと息苦しいが。
義を貫いたばかりに運命に翻弄される主人公は実に不器用な男だ。
しかしブレていない。
平山秀幸監督の演出にもブレがない。
そしてラスト15分のクライマックスへとつないでいく。
三左ェ門が藩主と対立する隼人正(吉川晃司)と剣を合わせるのだ。
冒頭と同様、ここでも静から動への激変に驚かされる。
2人とも剣の達人。
三左ェ門が小刀で挑むのがミソ。
殺気がみなぎる凄まじい立ち回りに息を呑んだ。
黒澤明監督『椿三十郎』(1962年)の一騎打ちのシーンさながら、大量に血を噴出させる。
CGは一切なし。
こだわっている。
死を前面に押し出し、これまでの藤沢映画6作とは趣を異にする。
題名に付けられた三左ェ門の秘剣とはいかなるものか。
豊川の見開く目にうならされた。
1時間54分。★★★★(見逃せない)
☆全国で公開中
(日本経済新聞2010年7月9日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。