2010年もはや6日が過ぎました。
4日には、昨年春に関西大学を卒業し、大手新聞社(朝日、読売、毎日)で奮闘している教え子たちと楽しい新年会があり、ふと大昔の記者時代を懐かしんでしまいました。
彼らはすっかり記者らしい風貌に変身していて、驚きました。健闘を祈っています~!!
さて、きょうはぼくの愛読書について綴ってみます。それも大阪本です。
大阪弁を流暢に操る作家は数あれど、めちゃめちゃ巧いなぁと唸らされるのが田辺聖子さんです。
そのお聖さんの『大阪弁おもしろ草子』は、単に大阪弁の知識(ウンチク?)を披露しているだけではなく、ひとつひとつの言葉にまつわる自身のほほ笑ましいエピソードや体験談、さらに古典をも紐解き、広く大阪の文化と風俗を見事に浮き彫りにしています。
『大阪弁ちゃらんぽらん』(1978年 筑摩書房)のパート?のような読み物ですが、ぼくは深みのあるこちらの方を断然、気に入っています。
決して高飛車に学術的に解説しておらず、終始、軽やかなノリで書き綴っているのがまたよろしい。その実、しっかり本質を突いている。
なによりも、全編にみなぎっている大阪弁に対するお聖さんの深い愛情と強いこだわりに気圧され、いつしかほんのりと酔わされます。
『「よう……せん」が死語になったら、大阪弁もおしまいかもしれない』というくだりに眼を走らせたりすると、うん、うんと理屈抜きに納得してしまいます。
なにを隠そう、本書はぼくにとっての参考書でもあるのです。
大阪弁の会話文を字にするとき、よくこの本を手に取りますが、そのたびに新たな発見があり、お聖さんのようにちゃんとした大阪弁を書かなあかんと刺激を与えられます。
そして大阪人に生まれてほんまによかったとしみじみ満足するのです。
これは非常に質の高い素晴らしいエッセイだと思っています。
小説では、文句なく『泥の河』を挙げたいですね。昭和30年、4つの川が合流する中之島の西端を舞台に、うどん屋の息子と廓舟で暮らす同い年の少年との交流と別離を描いた宮本輝氏の出世作です。
ぼくは原作に先んじて、この小説を映画化した小栗康平監督の『泥の河』(1981年)を観て、その哀切感に満ちあふれた映像に心を打たれたのですが、原作を読んでみて、またまた心にクサビを打ち込まれ、感涙したのでありました。
文庫本には芥川賞受賞作の『螢川』と抱き合わせで収められています。
『螢川』はなるほど、読みごたえのある作品ですが、如何せん舞台が富山とあって、浪花っ子のぼくには『泥の河』を前にすると、どうしても霞んでしまう。
それほどまでに、『泥の河』は大阪臭をふんぷんと放っていて、そこで繰りひろげられる登場人物の営みと彼らを包み込む風情を見るにつけ、あゝ、これぞ大阪の原風景なんやと思ってしまう。
行間からじんわりにじみ出てくる懐かしき大阪の匂い……。もうたまりまへんわ。
*『大阪弁おもしろ草子』
田辺聖子(1985年 講談社)*講談社現代新書
*『螢川・泥の河』
宮本輝(1994年 新潮社)*新潮文庫
ぼくの好きな「大阪の本」~
投稿日:2010年1月6日 更新日:
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