武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

バルト3国レポート(6)~

投稿日:2009年9月20日 更新日:

杉原千畝――。「日本のシンドラー」と呼ばれている人です。知っておられる人も多いでしょう。
杉原(2)
第2次大戦中、ナチス・ドイツの迫害からリトアニアに逃れてきたポーランドのユダヤ人に対して、本国の指示に背き、日本の通過ビザを発行し続けた日本領事館の領事代理を務めた人です。
当時、リトアニアの日本領事館はカウナスにありました。日独伊の三国同盟を結んでいた日本政府は、同盟国ドイツとの関係悪化を避けるため、ユダヤ人の保護には消極的でした。
しかし領事館に殺到する彼らを見て、杉原さんは独断でビザを発行しました。その結果、6000人を超えるユダヤ人の命が救われたといわれています。
リトアニア第2の都市、カウナスにぼくがやって来たのは、その杉原さんが執務していた旧領事館を訪れるためでした。いまは杉原記念館になっています。
カウナス駅からほど近い閑静な住宅地に記念館はありました。建物は69年前とほとんど変わっていません。この辺り、ロシア系住民が多いと聞いています。
杉原(1)
執務室は比較的、こぢんまりしていました。再現されたものです。
デスクの上にはタイプライターと電話の受話器、そして「4001」とラベルに赤く印字された1本のお酒。茶色っぽい液体ですが、ウイスキーではありません。見たことのないボトル。おそらくリキュールだと思います。杉原さんの愛飲酒だったのでしょうか。
杉原(3)
この部屋で杉原さんはユダヤ人のパスポートに署名し、領事館の印を押していたのです。かっちりした字体。生真面目な人だというのがわかります。
杉原(4)
ドイツとソ連との密約(モロトフ=リッペントロップ秘密協定)により、ソ連の勢力下に置かれたリトアニアにソ連軍が侵攻しつつあり、領事館員の退去が迫っていました。もはや猶予はありません。
そんな中でのビザ発行……。ちょっと想像できない状況です。
カウナスの地で、人権の尊さをぼくはあらためて実感しました。そして勇気とは何かを考えさせられました。

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。