武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

天使が舞い降りたベルリンの記念塔~

投稿日:2009年4月5日 更新日:

北朝鮮の飛翔体が発射され、大騒ぎになっています。ブース(?)が日本海と太平洋に落下したとのことですが、こんなときにあえて能天気なことを書かせてもらいます。
学生時代の放浪の旅、そして「ケルト」を求める旅を通して、ぼくはヨーロッパのあちこちを巡ることができました。もちろん大都会にも足を運びました。そのなかで思っていた以上に素敵だったのが、3年前に訪れたドイツの首都ベルリンでした。
(表現が悪いけど)ごちゃごちゃした大阪の街で生まれ育ったぼくからすると、ベルリンはなにからなにまでビッグ・サイズ。通りも建物もでっかい~! それに驚くほど整然としている。まぁ、悪く言えば、無機質的な感じがしないでもないけれど。
ベルリン大通り
そんなベルリンの象徴がブランデンブルク門です。米ソ冷戦の時代、「鉄のカーテン」の最前線ともいえる場所でした。いまや観光スポット化した威風堂々たるブランデンブルク門を越え、飛行場の滑走路のような6月17日大通りをまっすぐ西へ向かうと、金色の女神像ヴィクトリアをてっぺんに添えた戦勝記念塔(ジーゲスゾイレ)がそびえています。
高さ67メートル。実際に見ると、もっと高く見えます。19世紀後半、ドイツ(当時はプロシア帝国)がデンマーク、オーストリア、フランス相手に立て続けに勝利したことを讃えて建立されたものです。
てっぺんまで登れますが、エレベーターがない~! ぼくは285段の階段を一歩一歩、踏みしめて青息吐息で女神の足元にたどり着きました。そこで眼にした光景は、緑が一面にひろがるベルリンの市街地でした。公園もバカでかく、ほんとうに緑のなかに建物があるといった感じ。
〈この女神の肩のところにふたりの天使が羽を休めていたなぁ~〉
ベルリン・女神
その天使とは、ドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース監督の代表作『ベルリン・天使の詩』(1987年)で、人間の女性に恋情を抱き、人間になった天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)と、彼が心中を吐露した親友の天使カシエル(オットー・ザンダー)。
天使といっても、見かけは中年男性。永遠の生命をもち、人間の心の声を聞くことのできる天使には少し憧れますが、たぶんしんどいでしょうね。限られた生命だからこそ、そして人の心が読みにくいからこそ、人生は面白く、また価値があるのだと思います。
心やさしき彼らが休息の場に選んだのが、戦勝記念塔とはなんだか皮肉めいていました。ぼくは天使の目線になれず、人間の眼差しで広大なベルリンの街を俯瞰していました。
ワケのわからんややこしい飛翔体より、それこそ天使が舞い降りてきてほしいなぁ~。そう思ってしまう世の中がちょっぴり哀しいです。

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プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。