武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『キャデラック・レコード』~ブルースを育んだレコード会社の足跡

投稿日:2009年9月22日 更新日:

大学時代、ジャズとともにブルースをよく聴きました。いまでも大好きです。
単調ながらも深みのあるブルースの旋律を耳にすると、そのサウンドに身も心ものめり込んでしまうことがあります。
そのブルースを、アメリカ南部の黒人音楽から世界へひろめたのがシカゴのチェス・レコードです。
先日、ぼくが所蔵するレコードを整理していたら、『THE BEST OF MUDDY WATERS Vol.2』というチェス・レコードのアルバムが出てきました。大学2年のときに買ったのを覚えています。
IMG_0024
Vol.1も一緒に購入したはずなのに、いくら探しても見当たりませんでした。海外旅行の資金調達のため、売ったのかもしれません。残念なことです。
このチェス・レコード会社の歩みを描いたアメリカ映画『キャデラック・レコード』が公開されています。以下、日経新聞に載ったぼくの映画レビューをご紹介します。
   *     *     *     *     *     *
シカゴのチェス・レコードと言えば、ポピュラー音楽の原点アフリカ系アメリカ人(黒人)のブルースを育んだレコード会社として知られる。
その盛衰を、濃厚なサウンドとは対照的にやや恬淡と描いていた。
この会社は1950年、ポーランド移民のチェス兄弟によって設立された。
映画ではしかし、兄レナード(エイドリアン・ブロディ)しか登場しない。
南部出身のミュージシャン、マディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)がエレキギターをかき鳴らし、ハーモニカ奏者リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)と演奏しているのをレナードが見て、レコード契約を結ぶ。
その邂逅が全ての始まり。
それは新しい音楽の誕生だった。洗練されたシカゴ・ブルース。
圧倒的な歌唱力を持つハウリン・ウルフ(イーモン・ウォーカー)らが加わり、一大ブームに。
そしてチャック・ベリー(モス・デフ)がブルースとカントリーを融合させたロックン・ロールを世に放つや、白人の世界に飛び火し、英国のローリング・ストーンズもスタジオを訪れる。
後半はR&Bの女性歌手エタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)の存在感が際立つ。
現代の歌姫ビヨンセが情念をたぎらせて謳い上げる名曲「アット・ラスト」にぼくは聴き惚れた。
こうしたポピュラー音楽の潮流を、黒人女性監督ダーネル・マーティンは生真面目なほど忠実に焼き写す。もう少し人物に肉迫してほしかったが……。
黒人への偏見を持たないレナードはミュージシャンを家族と思い、ヒット曲を出せば、高級車キャデラックを与える。
白人とはいえ、恵まれた立場ではなかったユダヤ系という出自が影響していたのだろうか。
会社は70年代に幕を閉じる。文化を発信することの意味を考えさせられた。1間48分。★★★(見応えあり)
☆関西では、梅田ガーデンシネマほかで公開中
(日本経済新聞2009年9月18日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

学生たちの手応え十分!!~関西大学社会学部の講義『メディア史』

学生たちの手応え十分!!~関西大学社会学部の講義『メディア史』

インドから帰って来て2日後の5月31日、関西大学社会学部メディア専攻の講座「メディア史」(2限)に登壇しました。 『日本の初期映画史~大阪と映画』 こんな演題で、映画がいかにして日本に入ってきたのか、 …

日本スコットランド交流協会の講演会『映画で見るSCOTLAND!』、大盛況でした!

日本スコットランド交流協会の講演会『映画で見るSCOTLAND!』、大盛況でした!

昨日の昼下がり、とよなか国際文化センターで日本スコットランド交流協会(JSA)関西支部主催の講演会『映画で見るSCOTLAND 』が開催され、満席の中、講師としてベラベラと喋ってきました。 ぼくを、ラ …

大阪が舞台のブラックな社会派コメディー~『後妻業の女』

大阪が舞台のブラックな社会派コメディー~『後妻業の女』

  この手の映画はなぜか大阪が多い。   何でやねん?   あんまり「色メガネ」で見やんといてと言いたいけれど、これ、東京を舞台にしたら面白さが半減します~(^^;) & …

内田マジックが炸裂~極上コメディー『鍵泥棒のメソッド』

内田マジックが炸裂~極上コメディー『鍵泥棒のメソッド』

© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会 こういう映画、大好きです。   今日から公開されています。   もう一度、観てみたいなぁ。        ☆     ☆    …

どこまでもイギリス映画……『ガーンジー島の読書会の秘密』(30日から公開)

どこまでもイギリス映画……『ガーンジー島の読書会の秘密』(30日から公開)

イギリス(連合王国=UK)には王室保護領が2か所、あります。 アイリッシュ海に浮かぶマン島とフランス・ノルマンディーのコタンタン半島沖合に散らばっているチャンネル諸島です。 イギリスの領土なのに、それ …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。