梅田からの帰り、四つ橋筋をテクテク歩いていたら、肥後橋の交差点で赤信号にひっかかりました。なに気なく東の空を見上げると、ま~るいお月さんが、ぼくに微笑みかけるようにして浮かんでいました。
午後4時45分。まだ薄暮にもなっていないのに、お月さんがあんな高いところで真っ白に輝いているなんて、ちょっと信じられませんでした。ふだんは月はおろか天体のことなどまったくと言っていいほど意識していませんからね。
完全な満月ではなかったです。ほんの少しだけ欠けていました。でも信号が青に変わったことを忘れさせるほど、それは魅惑的な〈オーラ〉を放っていたんです。真っ青な空が円形の衛星をよりいっそう際立たせていました。
しばし立ち止まり、しげしげとお月さんを眺めていると、中学3年のときの出来事がまざまざと脳裏に浮かんできました。40年前のアポロ11号の月面到達です。その様子がドキュメンタリー映画『ザ・ムーン』で詳しく描かれていましたね。
1969年7月21日のお昼休み。そのニュースをテレビで見ようと、授業が終わるや、ぼくは職員室へ駆け下りました。そこにはすでに生徒が殺到しており、ちょっと異様な雰囲気。「みんな教室に戻れ~!」と職員室の入り口で何人もの先生が必死の形相で叫び、ぼくたちを制止していました。
こんな状況になると、ぼくは結構、強いです。というか、抜け目がない。「悪い、悪い~」「ごめんな~」「ちょっと通して~」とか言って、群れる生徒の間をくねり抜け、さらに先生のガードをも突破し、難なく職員室に到達できました。
その直後、月面に降り立った宇宙飛行士(アームストロング船長)の姿をブラウン管でしかと眼にしたんです。
「月に降りた~!!」。たぶん絶叫したと思います。先生らも「わ~っ!」と驚きの声を上げていました。人類がはじめて月面到達を果たした歴史的な瞬間でした。と、そのときはそう思っていました。が、ひょっとしたら録画だったかもしれません。
その夜、家からお月さんを見て、「あゝ、あそこに人間がいてるんや」と思うと、なんとも言えぬ気持ちに包まれ、全身にさぶイボが出たほどです。これ、大阪弁です。標準語では「さむイボ」。もっとわかりやすく言えば、鳥肌のことです。大阪人は、「寒い」を「さむい」とは言わず、「さぶい」と発音します。「眠たい」も「ねぶたい」です。
ごめんなさい、話が脱線しました。いま思えば、あの夜に見たお月さんに人間がいたのかどうかはっきりしません。というのは、宇宙飛行士がすでに月から離れていたかもしれませんから。
それに、当日の夜だったのかどうかも自信がありません。でも、満月だったにちがいないとずっと思い込んでいます。それほどまで強烈な出来事でした。
40周年に当たる7月21日は心してお月さんを鑑賞せなあかん。いや、月が見えなかったりして……、その場合、どないしょ??
そんなことを考えながら、帰宅するや、さらに高く昇ったお月さんを200ミリの望遠レンズで激写しました。トホホ……、被写体が小さい。すみません、クリックして見てください。
人類が到達したんやな~、あのお月さんに
投稿日:2009年2月8日 更新日:
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