武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

大阪

冊子『関西うまいもんばなし』が届きました

投稿日:2012年6月13日 更新日:

「明治安田生命 関西を考える会」が毎年、テーマを決めて関西の識者にアンケートし、そのコメントをまとめた冊子を出しています。
今年は『関西うまいもんばなし』。
ズバリ、「食」です。
食べ物冊子
ぼくも回答者のひとりとして、雑文を寄稿しました。
何しろ、食べ物に関する思い出は山ほどありますからね(^o^)v
これまで、駅(2011年)、まち(2010年)、昭和(2009年)、道(2008年)、笑い(2007年)、情景(2006年)、寺社(2005年)……などをテーマに冊子が発行されています。
詳細は、関西を考える会のHPをご覧ください。
さて、今年の分で、ぼくが寄せたアンケートを一挙、掲載しましょう。
長いですよ、覚悟してください(笑)。
☆滋賀県
「食材・素材」
〈鮎〉
琵琶湖で養殖されている鮎よりも、湖に注ぐいくたの河川に生息する天然鮎。
身が引き締まっており、箸で押さえて身をずらすと、サッと骨が取れる。
そこに近江の鮎の“主張”が感じられます。
最近、食べる機会が少なくなってきたのが残念です。
〈近江牛〉
近江八幡で屋形船を繰り出しての水郷めぐり。
そのとき、近江牛のすき焼きを食しながら、風情を堪能しました。
かれこれ15年ほど前のことです。
初めて口にした近江牛のとろりとした舌ざわりに、思わず「わーっ」と声を上げ、得も言われぬ甘い風味にぞっこん。
以降、病み付きです。
屋形船に合いますなぁ。
「食品・料理・加工品」
〈鮒ずし〉
日本酒党にはこたえられません。
学生時代、初めて食べたとき、腐ったような匂いが生理的に受け付けられず、吐き出したのを覚えています。
しかし人生経験をそれなりに積んできた30代半ばで、再び鮒ずしを口にする機会があり、そのときは甘口の日本酒のアテ(肴)にぴったり合ってメロメロになりました。
発酵食品をこれまで随分、食べてきたはずなのに、その本髄ともいえる鮒ずしの凄さを知らなかった(わからなった)ことを本当に後悔しました。
そのうちすべて同じ味ではないこともわかってきて、鮒ずしへの関心がにわかに高まりました。
ただし、日本酒がないと、口にはできません。
「文化・風習・その他」
〈エリ漁〉
琵琶湖に欠かせない風景です。
エリを見るだけで、琵琶湖を実感できます。
ぼくの幼少期にはもっとエリが多くあったような気がしていますが、年々、減ってきているのでしょうね。
大津に住む知り合いの大学生から、まだ一度もエリを見たことがないと聞かされ、無性に哀しくなりました。
☆京都府
「食材・素材」
〈壬生菜〉
みず菜と似ていますが、「壬生菜」と聞くと、「絶対、美味しいはずや」と勝手に解釈してしまいます。
これはもうブランド力ですね。
鍋で食べたら、本当にうまいと思います。
普通のみず菜に比べて、シャキシャキ感が強く、それでいて「コク」のような深みがあります。
我が家では、壬生菜のない鍋はあり得ません。
〈万願寺とうがらし〉
7年前、生まれて初めて万願寺とうがらしを食べました。
「とうがらし」という名がついており、しかもビッグサイズとあって、これは相当辛いと覚悟していたのですが、口の中が甘い風味で満たされたので、驚きました。
完全にカルチャーショックでした。
というか、見かけや名前だけで偏見を持ってはアカンと教えてくれた野菜でした。
いつもそのままサラダでいただいております。
〈伏見の宮水〉
大学卒業後、20代の後半まで京都で足かけ5年間、暮らしていました。
ある日、伏見の藤森神社を訪れ、そこの湧き水を容器に入れている人の姿を目にして、飲めることを知り、反射的に口に含みました。
その瞬間、身体に電流が走りました。
「うまい!!」
それまでこんなまったりした水を飲んだことがなかったから。
その湧き水を持ち帰り、夜半、ウイスキーを割ったら、グラスの中で「水の精」が踊っているような感じがしました。
「食品・料理・加工品」
〈すぐき漬〉
京都暮らしの中で、本当にうれしかった出会いがありました。
それがすぐき漬との邂逅です。
かぶらが苦手だったので、当然、すぐきも敬遠していました。
食べず嫌いです。
しかし八瀬の漬物店を取材したとき(当時、新聞記者でした)、仕事上、やむなくすぐきを食しました。
グッと飲み込もうとしたら、ほどよい酸っぱさが口の中にひろがり、かぶらであることを忘れさせてくれました。
気がつけば、すっかり魅入られてしまって。
このことはぼくの人生でもかなり大きな比重を占めています。
以降、冬場、食卓には必ずすぐき漬があるようになりました。
懐具合で、大阪のデパートでよくキザミすぐきを買いますが、やはり漬物ひとつを包丁で切って食べる方が断然、美味しいですね。
もう少し値段が安くならないかなとずっと念じています。
大阪を代表するすぐきファン。
今ではこう自負できると思っています。
「文化・風習・その他」
〈川床〉
川っていいですね。
とくに夏場は。
川面を吹き抜ける風が何とも心地がいい。
鴨川の川床は、身体にもよさそうな天然の冷房を満喫しながら、京料理に舌鼓を打てるとあって、最高です。
落ち着いた風情をかもし出す京の夏の風物詩。
食文化に絡んだ素敵なウォーターフロントだと思います。
ただ、料金が割高で、蚊に悩まされるので、そうしょっちゅう利用することはありませんが。
〈流しそうめん〉
京都だけのものではないと思いますが、貴船の流しそうめんは、避暑を堪能させてくれます。
食べることが主ではなく、風流に、かつちょっと焦ってそうめんをすくい取るという作法が面白いです。
どこの麺を使っているのか、前々から気になっています。
☆大阪府
「食材・素材」
〈水ナス〉
これ、理屈抜きに美味しいですね。
さっぱりした食感が、さらに食欲を高めます。
夏場、ハイボールのアテにしばしば食べています。
よぉ、合いますわ。
幼いころ、水ナスを口にした記憶がないのですが、昨今、よく見かけますね。
ポピュラーになってきたのでしょうね。
〈門真のレンコン〉
「レンコンと言えば、門真」
幼少期、こんな図式が頭の中でできあがっていました。
実際、遠足で京阪電車に乗ると、門真辺りは湿地帯が多く、レンコンがいっぱい育っていたのを見た覚えがあります。
今では湿田はかなり埋め立てられているようですが、それでも「門真のレンコン」と明記されたのを目にすると、ちょっとときめいてしまいます。
他の産地であっても、ぼくにとってはレンコン=門真なのです。
これはもうどうしようもありません。
〈柏原のブドウ〉
高校、大学の一時期、柏原市に住んでいたことがあり、そこのブドウには親しみがあります。
すぐ近くにブドウ畑がひろがっていましたし。
小粒で、それほど甘くはなかったと記憶していますが、昨今、かなり芳醇な甘さになっており、吃驚しました。
ブドウと言えば、岡山のイメージが強いですね。
しかし地元・大阪でもちゃんと栽培されているのが何よりもうれしいです。
柏原の国分に住む知人から柏原ブドウをよくいただくので、青春時代を懐かしんで味わっています。
〈カタクチイワシ〉
大阪湾で獲れる魚の代表格が、カタクチイワシだと勝手に解釈しています。
昔はチヌ(クロダイ)でしたが……。
イワシは種類が多くて、正直、どれがカタクチイワシなのか判別できないけれど、メザシはそれに違いないと、これまた勝手に解釈しています。
物心ついたときから、メザシはほぼ毎日、食卓にのぼっていました。
「大阪の海で獲れた魚やで」
祖母からいつも聞かされていたので、メザシという魚があるとずっと勘違いしていました。
しかも大阪湾でしか生息していないと思い込んでいたのです。
ある日、小学校の友達から、メザシがイワシだと教えられ、大きな衝撃を受けました。
そんなこんなで、ぼくにとってカタクチイワシは大阪が誇る海の特産物です。
「食品・料理・加工品」
〈粉モン〉
粉モンの嫌いな大阪人なんて、絶対にいないと信じています。
ぼくは365日、毎日、粉モンでも十分、満足できます。
お好み焼き、たこ焼き、モダン焼き、うどん、焼きそば……とバリエーションに富むので、飽きることはありません。
腹持ちがいいのがこたえられません。
ビールにもよぉ合いますしね。
お好み焼きは、目の前で調理できるのが最大の利点ですね。
気を抜いて作ったら、それなりのモノしかできないけれど、丹精込めて(大そうな!?)焼くと、心までとろけるほど美味になります。
広島焼きも好きですが、カップの中で具をごちゃごちゃ混ぜる大阪バージョンがやはり性に合っています。
ドロンとした具を鉄板に流し落とすとき、ウキウキしてしまいます。
こんがり焼き上がってから、ソースとマヨネーズを塗る(あるいはチューブから絞り出す)仕草も、食べる前の素敵な儀式だと思っています。
たこ焼きもそうですが、マヨネーズを使うという発想はノーベル賞ものですね。
一体、だれが考案したのでしょうか。尊敬しています。
たこ焼きはソース党(+マヨネーズ+カツオブシ+アオノリ)ですが、ポン酢で食べるのもなかなかオツなものです。
お酒にピッタリ。
そこに紅しょうがあれば、もう言うことありませんわ。
醤油を具に混ぜて焼いているお店もありますね。
一度、ブイヨンを加味しているというたこ焼きを味わったことがあります。
作り方は自由。
これが本道というのがない。
そこがいいです。
美味しかったら、それでええねん。
大阪らしい食べ物だと思います。
〈てっちり(てっさ)〉
明日、地球が滅亡するとしたら、どんな手段を講じても食べてみたいのが、てっちりです。
食べ始めたのは社会人になってからです。
子供が食べたら、バチが当たる。
社会人といっても、猛毒を持っているフグは危険なものというイメージがつきまとい、怖がりのぼくは長らく、てっちりを敬遠していました。
ところがつき合いでてっちりの鍋をつついた途端、はまりました! 
他の白身魚にはない独特な風味にノックアウトされてしまって。
あの淡彩な味わいがてっちり、てっさの醍醐味ですね。
それを決める大きな要素がポン酢です。
いかにフグが良質のモノであっても、ポン酢次第で味が大きく左右します。
てっさの他に、フグのから揚げと湯引きが添えてあれば、申し分ないです(ぜいたくな!)。
そして締めは雑炊。
こんな美味いモンがこの世に存在するんかと思わせるエンディングです。
おっと忘れていた。
ひれ酒がないと、てっちりは始まりません。
大仕事をやり遂げたとき、吉事が舞い込んできたとき……、つまり心が満たされているときに味わう食べ物ですね、てっちりは。
自分へのご褒美。
いつもそう思っています。
いつぞや東京で、フグ鍋(てっちりこと)を食べて、びっくりしました。
味ではなく。値段に!!
ひれ酒の酔いも醒めるほど高かった。
まだ比較的、安く食べられる大阪人に生まれてよかったと実感した次第です。
本音はもっと安くしてほしいと思っていますが。
〈しゃぶしゃぶ〉
てっちりが魚の鍋の代表格なら、大阪で生まれたといわれるしゃぶしゃぶは肉系鍋の王者です。
言い過ぎかもしれませんが、ぼくの意識ではそうなんです。
味うんぬんよりも、ネーミングに惚れます。
肉をお湯の中に浸け、しゃぶしゃぶさせてから食べる。
わかりやすすぎるし、早く口に入れることができる。
イラチの大阪人らしい発想で、脱帽します。
今や全国津々浦々、しゃぶしゃぶはひろまっています。
海外でも受けると思います。
そう言えば、ロンドンでしゃぶしゃぶ店を見たことがあります。
ぼくはゴマだれが苦手で、ポン酢一辺倒です。
理屈抜きにポン酢が大好きなんです。
豚しゃぶもポピュラーになってきましたが、やはりしゃぶしゃぶと言えば、牛肉ですね。
お湯の中で肉がギュッと縮んでいくのを見ると、快感を覚えます。
〈ハモちり〉
京都の人は「ハモおとし」と言いはりますが、大阪人は「ハモちり」です。
天神祭の日にいただく夏の風物詩ですね。
よろしおまんなぁ。
ハモは関東ではあまり食さないと聞いています。
大阪では、夏になると、当たり前のように口にします。
ハモの実物を目にして、ちょっとグロテスクな容姿にうろたえましたが、さっぱりした味と骨切りによるシャキシャキした食感がそんなことを忘れさせてくれます。
フグにしろ、タイにしろ、大阪人は白身魚が好きですね。
酢味噌で食べる人が結構、います。でもぼくは梅肉でないとあきません。
最近、梅肉の風味の違いがわかってきて、大人になったなぁと思う今日この頃です。
〈関東炊き〉
いつのころから「関東炊き(かんとだき)」の名称が廃れ、「おでん」の名が主流になってきました。
ひとつの大阪文化が消えていくように思え、すごく寂しいです。
ぼくの幼いころは、関東炊きが当たり前でした。
推察するに、マンガ『おそ松くん』のちび太がおでんばかり食べていて、それが引き金となって全国区にひろまっていったような気がしています。
おでんと関東炊きはちょっと違うと思います。
おでんは串で刺したのが多いけれど、関東炊きにはそんなモノはありませんよね。
今では混同されているみたいですが。街中で時折、「関東炊き」のノレンや看板を見ると、思わず顔がほころんでしまいます。
どうか「関東炊き」の名がなくならないようにと祈るばかりです。
〈紅しょうがの天ぷら〉
高級な天ぷら料理店ではまずお目にかかれません。
スーパーや市場で売っているアレです。
紅しょうがの天ぷらは東京にはないと聞きました。
揚げた衣と紅しょうがかもし出す絶妙な風味がなぜ全国にひろまらないのでしょうか。
それが不思議でなりません。
天つゆで食べるなんて論外。
醤油をかけていただく。
中にはソース党の人もいますが、やっぱり醤油でしょ。
庶民的な天ぷらには醤油かソースか。
このことで友人と2時間ほど論じ合ったことがあります。
ともあれ、紅しょうがの天ぷらとビールは最高の取り合わせです。
「文化・風習・その他」
〈立ち呑み〉
大阪独自の飲み方がどうか知りませんが、大阪には立ち呑み屋が多いのは確かです。
座ってしまうと、ちょっと一杯が二杯、三杯となってしまいがち。
でも立ち呑みだと、キュッと一杯ひっかけ、「はい、お勘定~!」と言いやすい。
だから立ち呑み屋で長居するのはルール違反だと思っています。
混み合ってくると、隣の客と肩が触れるか触れないか微妙な間隔ができ、そこがまた庶民の酒場らしくていいですね。
〈串カツマナー〉
「二度漬け禁止」
ご存知、串カツ屋のルールです。
それを逆手に取って、「ほんなら、三度漬けはええんやな」とイチビッて言っていた客がいました。
すると店のおばちゃんが「三度漬けは値段が倍や」と。
負けてまへんなぁ。
大阪人はオモロイですわ。
串カツは食べた串の数を数えて勘定します。
中にはわざと足元に串を落としている客がいまして。
うまくごまかせたと思っていたのでしょうが、店のおばちゃんは鋭い。
「お客さん、串食べてもうたらドンならんなぁ」
ちゃんと見てはる。オモロイです。
☆兵庫県
「食材・素材」
〈明石ダイ〉
大阪人はタイが大好き。
ぼくも例外ではありません。
スーパーやデパ地下で、タイに「明石」の名が添えてあれば、思わず足が止まってしまいます。
変に生臭くなくて、どこかコリッとしたところがいい。
あの潮流の激しい海でもまれて生きてきたんやなぁ……。
ちょっと大げさかもしれませんが、明石ダイをいただくとき、ときどきそんなことを考えるんです。
〈淡路島たまねぎ〉
甘い。
それも深みのある甘さ。
ええ塩梅です。
千切りにして、カツオをかけ、醤油を落としていただくと、お酒のアテによく合います。
加工品になりますが、淡路島たまねぎのスープ、これ大好きです。
コンソメ味と絶妙なるトリミング。
冬場はコーヒー代わりに飲んでいます。
〈丹波黒豆〉
枝豆がかくも美味しいものと再認識させてくれたのが、丹波黒豆でした。
他の豆と風格が違いますね。
お豆さんの王者みたいな感じで。
先日、丹波笹山へ黒豆を買い求めに出かけた友人から分けてもらいました。
あっと言う間に、50袋(この表現でいいのでしょうか)ほど胃の中に入ってしまいました。
ついつい食べ過ぎて、オナラがよく出るのが困りものですが。
「食品・料理・加工品」
〈ステーキ〉
神戸牛のステーキ。
最高ですね。
口の中でとろけていく感触がたまりません。
なぜか切なさも感じてしまって。
でも、あまり味わったことがないんですよ。
値が張るから。
もう少し安くしてほしいです。
といっても、超一流のブランドですから、それは無理でしょうね。
今度、めでたいときにガッツリいただきます。
〈明石焼き〉
大阪風のたこ焼きしか知らなかった小学生時代のぼくが、初めて明石焼きを口にしたときの衝撃は計り知れなかった。
いや、いきなり口の中に放り込んだので、やけどしましたが!! 
今でも同じ過ちを繰り返しています(^o^)v
それほどまで明石焼きには魅力があるということです。
ダシに浸して食べる。
たこ焼きをそんな風にしていただくことが信じられなかったのです。
衣も卵主体。
たこ焼き観が一変しました。
まぁ、たこ焼きとは全く別のモノですが、当時のぼくにはその区別がつかなかった。
食べると、タコがストレートに入ってくるのも気に入っています。
明石焼きは、ぼくにとって“よそ行き”のたこ焼きです。
「文化・風習・その他」
〈南京町〉
テーマパークみたいな空間で、神戸に行くと、ウキウキしながらよく立ち寄っています(もちろん、食べています!)。
この手の中華街は、日本には神戸と横浜、長崎しかないので、南京町には頑張ってもらいたいです。
できればもう少し規模を大きくしてほしいけれど……。
☆奈良県
「食材・素材」
〈やまといも〉
すってポン酢を落とし、ご飯にぶっかけて食べると、めちゃめちゃ元気になるような気がします。
実際、精がつくそうで……。
強い粘りが特徴とあって、根気のないぼくにも粘り根性が芽生えそうな気もします。
毎日、食べていたら、どうなるんやろうとふと思いました。
「食品・料理・加工品」
〈三輪そうめん〉
三輪はそうめんの発祥地ですね。
桜井周辺でそうめん工場を見たこともあり、すごく親しみを覚えています。
ぼくにとって一番、心が和らぐ聖林寺の十一面観音菩薩をお参りするとき、“そうめんの里”を歩いていくので、三輪そうめんを食べると、不思議と十一面観音のお顔が脳裏に浮かんできます。
そうめんと仏さん。
面白い取り合わせですね。
〈柿の葉ずし〉
ぼくの好物の上位にランクされる食べ物です。
滅菌効果のある柿の葉でお鮨を包んでいるのが、何ともオシャレ。
葉っぱをめくって、鮨を口にする“作業”が好きです。
奈良の人は偉いですね。
こんな美味しい保存食を考案しはったんですから。
吉野に出かけたとき、眺望満点の食堂で向かいの山並みをぼんやり眺めながら、ビールで柿の葉ずしを食べた、そのシチュエーションが最高でした。
酢でしっかりしめた具のサバとサケ、小ダイがまたよろしい。
〈吉野葛〉
鍋には欠かせません。
ハルサメ、マロニーとは全然、違いますね。
思いのほか腰があり、ダシを見事に吸い取って、歯ごたえのよさと共にノド元を通っていく。
すごく美味いと思います。
吉野葛のない鍋は、タコの入っていないたこ焼きみたいなものです。
☆和歌山県
「食材・素材」
〈クエ〉
フグに匹敵する美味しさですね。
ゼラチン質の美味しさはフグよりも勝るかもしれません。
そうめったに食べる機会はありませんが、年に一度は味わいたいと思っています。
大阪にもクエの専門店があれば、教えてもらいたいです。
和歌山が誇る世界的な魚、それがクエだと言い切りたい。
〈くじら〉
ぼくらの世代(50代後半)、幼少時代にはくじらが食卓にしょっちゅう上っていました。
南蛮漬け、竜田揚げ、ステーキ、ベーコン、おばけ(皮くじら)……。
献立が多彩。
すき焼きでも、牛肉は贅沢ということで、くじらの肉が多かったです。
学校の給食でも、肉と言えば、くじら。
本当にくじら尽くしでした。
その影響もあってか、プロ野球でも大洋ホエールズのファンがクラスに必ず1人はいてました(関係ないかな?)。
捕鯨が制限され、今やくじらは高級品。
いやぁ、隔世の感がします。
一部の過激な環境団体や反捕鯨団体から敵視され、捕鯨で生計を立てている人は厳しい状況に置かれています。
でも、日本人がくじらを食べ続けてきたのはひとつの食文化なのだから、それを尊重する必要があると思います。
現在の反対グループは、人様の家に土足で上がり込んできて、仕事をしている漁師を罵倒しています。
感情ばかりが先走っており、どうして相手との違いを理解しないのでしょうか。
これは原理主義丸出しです。
悲しいことだと思っています。
ぼくはこれからも状況が許すなら、くじらを食べ続けます。
「食品・料理・加工品」
〈和歌山ラーメン〉
和歌山に行くと、かなりの確率で和歌山ラーメンを食べます。
いろんな種類があり、厳然とひとつのスタイルを貫いていないところに妙に惹かれます。
大らかさと言いましょうか。
ぼくは醤油ベースのラーメンが好きです。
店によって味がバラバラ。
いいですね~。
☆関東との相違点
「食品・料理・加工品」
〈昆布ダシ〉
関西のダシの本髄。
カツオブシのような直線的な風味を出さず、あくまでもまったりと。
昆布ダシが関西の食文化の基盤になっている。
有名な料理人がそう言うてはりました。
その通りだと思います。
〈薄口醤油〉
東京で出てくるうどんやそばの黒いダシ、あれを見るだけで食欲が減退してしまいます。
塩分量は薄口も濃い口も変わらないそうですが、要は見場の問題。
麺類ひとつを取ってみても、ダシが黒いと、素材がなかなか見えない。
そんなんイヤです。
透き通っているところに美意識が感じられます。
〈お造り〉
「刺し身」と言ってもいいんですが、「お造り」という表現にまろやかさがあり、ぼくは全国どこに行っても、お造りで通しています。
これは一種のこだわりであり、自己顕示でもあります。
俺は大阪人、関西人なんだという。
〈豚まん〉
豚まんはやっぱり豚まん。
具が豚肉なんだから、肉まんは絶対におかしい。
関東では肉=豚肉らしいですが、関西では肉=牛肉だから、それに従って、豚まんで通しましょう!
〈すき焼き(割り下なし))
割り下があれば、確かに早くすき焼きが出来上がります。
でも、味が統一されてしまい、何よりもすき焼きを自分流に作っていく作業がなくなり、どうも物足りない。
砂糖、水、お酒、味りんなどを「ちょっと多いかな」「まぁ、こんなもんやろ」とか言いながら、鍋に添加していくのが、すき焼きを味わう楽しみのひとつです。
☆文化・風習・その他
〈ウナギの腹開き〉
あっさり風味の江戸風の背開きと比べ、腹開きはこってりしています。
淡彩な味が身上の関西で、ある意味、ウナギは特異かもしれませんね。
ひとつぐらい濃厚な味わいの食べ物があってもいいのでは。
☆関西発祥
「食品・料理・加工品」
〈即席めん〉
1週間に何度、口に入れていることやら。
即席めんはもう完全に日常食になっています。
昼ごはんに関して言えば、即席めんはかなりの高率になっているはずです。
合理主義が尊ばれる大阪で生まれた即席めんですが、やたらと種類が多く、気がつけば、新商品がどんどん店頭に並んでいます。
その都度、それなりにどれを買おうかと悩んでいます。
でも、よくよく考えれば、チキンラーメン、ワンタンメン、カップヌードルと食べるのは限られています。
その点、ぼくは意外と保守的なんだと実感させられます。
便利ゆえ、つい食べてしまいますが、カロリーやコレステロール、塩分量などを考慮すると、1週間に1度くらいの割にしておく方が体に良さそうですね。
とはいえ、ついついカップにお湯を注いでしまう。
この葛藤は死ぬまで続くでしょう。
インスタントとはいえ、美味しいですから!
〈塩昆布〉
これはすぐれモノです。
ほんの少しの塩昆布で、ご飯一杯は楽々、食べてしまえる。
だから学生時代、塩昆布は必需品でした。
さすがに社会人になると、そういう目的は脱し、お酒のアテによく食しています。
昆布をしがんでいくと、昆布本来の甘みが感じられ、そこに塩昆布の奥深さがあるのだと思うようになってきました。
大阪が生んだ逸品です。
〈ボンカレー〉
レトルト・カレーの草分け。
いろいろレトルト・カレーを食べまくった末、最後にはボンカレーに戻ってきました。
何でも原点となるモノに回帰してしまいますね。
激辛のボンカレーってあるのでしょうか。
一度、汗をかきながら、フーフー言いながら、食べてみたいです。
具が少ないと思っている人が結構、いるのではないでしょうか。
牛肉にこだわらず、鶏肉、豚肉、野菜など多彩な具をぼくは望んでいます。
「文化・風習・その他」
〈回転寿司〉
すしを食べたい。
でも、堅苦しい店はイヤ、あまり散財もしたくない。
そんな消費者の心を射止めたのが回転寿司です。
寿司を与えられているようで、飼育場の鶏みたいな心境になるのはちと辛いですが、ベルトコンベアーで流れてくるさまざまな寿司をピックアップするのが、今やひとつの食文化になってきました。
ただ、時々、何周も回って、具がパサパサになっているのを見かけます。
どのように鮮度をチェックしているのか、そこのところが気になります。
最近、普通の寿司店で寿司を食べたことのない若者が少なくないですね。
どのように注文すればいいのか困っていたり、「鉄火ちょうだい」などと声を上げるのを恥ずかしがっていたり……。
これも時代ですかねぇ。
はたから見ていたら、面白いですが。
☆関西の「食」の課題 自由意見
 東京一極集中の弊害で、全国どこもよく似た色に染まりつつあります。
まるで金太郎飴のごとし。
食文化においても、東京を拠点に置くチェーン店が何と多いことでしょう。
味が均一化するというのは、地域の食文化の崩壊につながっていきます。
だからこそ今、各地で食の個性が叫ばれています。
関西は、全国的に見ても、かなり独特な食文化を有しています。
その関西の中でも多彩な色合いがあります。
しかしグローバリズムの流れに乗ってしまうと、徐々にそうした独自性が失われていくのは目に見えています。
これまで培ってきた伝統に根づく食文化に誇りを持ち、それをさらに強めていこうとする気概を、関西人のすべてが持ってもらいたいと願っています。
東京の顔色を見る必要なんてさらさらないと思います。
具体的な方策として、伝統野菜や隠れた食材、忘れられた食材を今、一度、見直すこと。
そして関西の料理は、できるだけ関西の食材を使う。
これは何もガチガチの関西原理主義者になれと言っているのではありません。
流行は敏感に察知し、いいモノはどんどん採り入れる。
ただし、節操なくしてそれを行うと、個性が失われていきます。
そのさじ加減が難しいですが、関西色を出すという気持ちがあれば、可能だと思います。
「関西食べ歩きツアー」「食べ歩きウォーキング」「食べ歩きランニング」「食べ歩きハイキング」。
気軽に参加できるこうした企画が各地で実施されれば、消費者の意識も高まってくるような気がします。
☆「食」についての自由意見
飽食の時代です。
捨てられる食べ物がどれだけあるのでしょうか。
その一方で飢餓に苦しんでいる人たちが世界各地にいます。
食事をするとき、残さない。
店に入ったら、胃に入る分量だけオーダーする。
余った料理は家へ持って帰る。
こういうルールを定めてもいいかもしれません。
残飯の問題を本気で考えないと、とんでもないことになります。
日本は食材の多くを輸入に頼っている現状なのですから、なおさらです。
「食べ物、残したらアカン!」
今こそ政府が音頭を取ってキャンペーンを張ってほしい。
国が動かなければ、まずは関西が率先してやる。
  以上です(^o^)v

-大阪

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プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。