武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

心を癒すニャンコたち~『レンタネコ』

投稿日:2012年5月12日 更新日:

『レンタネコ』という日本映画が今日から公開されています。
レンタネコmain_mail
(C)2012 レンタネコ製作委員会
「かもめ食堂」(2006年)、「めがね」、(07年)「トイレット」(10年)。
俗に言う“ゆる映画”を撮り続ける荻上直子監督の新作は、やはり癒しを主眼に置いた人間ドラマだった。
ネコを介して孤独な人を救済するという発想が面白い。
庭のある日本家屋で独り暮らしをするサヨコ(市川実日子)は多くのネコを飼っている。
いや、同居と言った方がいい。
とてもペットとは思えないから。
10匹以上はいる。
よほどのネコ好きなのはわかるが、その中から数匹をリヤカーに乗せ、「レンターネコ!」とアナウンスしながら、川べりを歩く。
この場面、唐突で笑わされた。
一定期間、ネコを貸すレンタル業。こんな仕事で食べていけるのか。
ぼくの疑問はその後、意外な本業を見せられ、解明できた。
ネコ貸し業は金儲けというより、慈善事業に近い。
上品な老婦人(草村礼子)、単身赴任中の中年男(光石研)、レンタカー営業所の女性スタッフ(山田真歩)、胡散臭い中学時代の同級生(田中圭)。
台詞の少ない穏やかな映像の中で、ネコを借りる人たちとのふれ合いが綴られる。
スローテンポは最後まで崩れない。
みな孤独感を抱き、何かしら温かさを求めている。
その理由を映画はやんわりと浮き彫りにしていく。
人生を達観したサヨコの生き方と全身から放たれる大らかな空気。
そして独特な世界観。
知らぬ間にその居心地の良さに浸っていくが、同時に現実離れした違和感を覚える。
まぁ、寓話なのだから、仕方がない。
ネコ嫌いな人は別として、後味は格別だ。
心が乾いた時にはうってつけ。
まさに清涼剤映画!?
ただ気がかりなのは、荻上監督のテイストが変わらないこと。
今回は動物という変化球を使ったが、マンネリ感は否めない。
次回作で華麗なる変身を期待したい。
1時間50分
★★★
☆5月12日(土)より、シネ・リーブル梅田/なんばパークスシネマ/MOVIX京都/シネ・リーブル神戸
(日本経済新聞2012年5月11日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。